「老衰死」の定義と推移
死亡年齢の高齢化とともに急増

 では、老衰死について改めて考えてみる。広辞苑で「老衰」を繰ると文字通り「老いて心身の衰えること」とあり、究極の衰えが老衰死であろう。厚労省は「高齢者で他に記載すべき死亡原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います」と定義している。医師向けの「死亡診断書記入マニュアル」で明記した。

 人口動態統計によると、老衰死は1950年代から減少し始め、2001年に前年を上回ってから増勢に転じ、以降増え続けている(図2)。2000年の老衰死はわずか2万1213人、全体の2.2%で死因順位は7位だった(図3)。07年でも3万7000人止まりだが、10年後の2017年には10万人を超えた。死因順位も15年の5位からわずか3年後に3位に浮上した(図4)。

「老い」が原因なので死亡年齢の高齢化とともに老衰死は急増している。今や亡くなる日本人の85%は70歳以上である。

 死亡診断書の死因の多くはがんや心疾患、肺炎など病名が記される。大学病院や総合病院では「死亡診断書の死因欄には病名を書くのが当たり前。老衰は病名でないから書いてはならない。病名を突き止めるのが医師の役割」とされることが多い。このため「勤務医時代は老衰と書いたことがない。在宅医になって初めて老衰死を書くようになった」と述懐する診療所の医師は少なくない。

 死に場所の中で「病院での死」がピークを迎えたのは2005年である。82.5%と、日本人の5人のうち4人は病院で死んでいた。その後、施設死が増えてきたため2019年には72.9%まで下がったが、欧米諸国の50%前後にはまだ追いつかない。