何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、“あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする「裏ワザ」を紹介したシニアマネーコンサルタント・税理士の板倉京先生の話題の著書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!
再就職しない場合の選択肢は3つある
退職後、すぐに決めないといけないことのひとつが、「健康保険」をどうするか、です。再就職する場合は、再就職先の健康保険に自動的に加入しますが、そうでない場合は自分でどの健康保険に加入するかを決めて、手続きをしなければいけません。
退職後、再就職しない場合の健康保険の選択肢は3つです。
①勤めていた会社の健康保険を任意継続する(2年間)
②国民健康保険に入る
③働いている家族の健康保険組合に扶養家族として入る(家族の扶養に入る)
一番おトクなのは、③の「家族の扶養に入る」方法です。保険料の追加負担はゼロですし、加入する健康保険組合のサービス(介護給付や人間ドックなどの補助、福利厚生サービスなど)を受けることもできます。扶養に入る条件は、年金や失業手当の給付なども含めて年収180万円未満(60歳未満の場合は130万円未満)であることなど。この年収は、前年度の収入ではなくて、「見込み」収入額で計算するので前年度の収入が高くても大丈夫です(詳細は本書に)。
妻や子の扶養に入ることに抵抗がある人もいるかもしれませんが、そんなことは気にせず入れる期間だけでも入っておくとおトクです。扶養の条件は、健康保険組合ごとに異なりますので、実際の条件は家族の加入している組合に確認してください。扶養に入る場合の手続きは、退職日の翌日から5日以内です。
「国民健康保険」は前年度の収入が高い人は不利
家族の扶養に入れない場合は、①「勤めていた会社の健康保険を任意継続する」か②「国民健康保険に入る」を選択します。
「国民健康保険」は、前年度の収入をもとに計算するので、前年度の収入が多いと保険料が高くなりがちです。
「任意継続」の保険料は、退職時点の給与をもとに計算します。これまでは会社が半分負担してくれていた保険料を全額自分で負担することになりますので、かなりの負担になるように見えます。しかし、負担額に上限が決められているので、前年度の収入が高い人は退職した年は「任意継続」のほうが有利なケースが多いようです。実際にいくらになるのかは、会社に聞けば教えてもらえます。
「家族の扶養に入る」と同様、「任意継続」には、介護給付や人間ドックなどの補助、福利厚生サービスなどがついていることがあるので、保険料だけでなく、それも加味してどちらがおトクかの判断をしましょう。
「任意継続」は途中退会ができない!?
「任意継続」を選ぶと2年間は保険料が固定です。退職1年目の収入が少なければ、2年目は国民健康保険のほうが安くなることもありますし、家族の扶養に入れるようになる場合もあると思います。
そんな時は、「任意継続」をやめて「国保」や「扶養」に切り替えたほうがおトクです。
ただし、注意しないといけないのは、「任意継続」は、表向き、途中退会ができないとなっていること。「途中退会したい」と申し込んでも「辞めることはできません」と言われます。
でも、あきらめなくて大丈夫! やめたいなら、保険料を払わなければいいのです。
「任意継続」は、保険料を期限までに支払わないとその時点で資格喪失になります。保険料の支払いをやめて「資格喪失」の通知書が送られてきたら、その通知書をもって「国民健康保険」や「扶養」の手続きをすればいいのです。
ちなみに、一括で保険料を前納していると、途中退会したくても、返金もされず、退会できないので要注意です。
「任意継続」を選んだ人も2年間限定ですので、3年目からは、国民健康保険に加入するか、家族の扶養に入るかを選ぶことになります。
「国民健康保険」の保険料は、計算サイトで確認できます。
「国民健康保険」は、世帯単位で計算します。あなたの社会保険の扶養になっている人に収入がある場合は、その収入も加味して計算します。
なお、60歳未満であれば、「任意継続」か「国民健康保険」を選んだ場合、国民年金への加入が必要になります。扶養に入っていた専業主婦の妻も同様ですので、手続きを忘れないようにしてください。
定年退職前後は、これまで会社がやってくれたことを、自分で判断し、選択しなければならないことが多くなります。その時に大事になるのが、制度の利用の仕方や、節税対策などのお金の知識です。本書では、他にも、知らないと損をする様々な制度や裏ワザを、分かりやすく説明しています。ぜひご参考にしてください。