福祉事務所で起きた仰天事件 は
特殊な組織の特異な事件なのか
新年度は、職場に新しいメンバーを迎える季節だ。コロナ禍で採用が抑制されている場合は、コロナ後の採用に備える機会である。2019年、2つの福祉事務所で発生した不祥事とその後の状況から、職場づくりのヒントを得ることはできないだろうか。
2019年の6月と12月、京都府向日市と滋賀県米原市において、福祉事務所の現職ケースワーカーが刑事事件で逮捕された。ケースワーカーであった向日市職員のXさんと米原市職員のYさんは、いずれも当時20歳代の男性であり、人柄にも能力にも定評があった。
向日市のXさんは、元暴力団組員で傷害致死などの前科を持つ50歳代の男性受給者を担当していた。男性は、約1年半にわたって不当要求をエスカレートさせた末、同居していた女性に暴行を加えて死なせた。さらに、担当ケースワーカーだったXさんを脅迫して協力させ、女性の遺体を遺棄した。
米原市のYさんは、「親族が暴力団関係者」と称する20歳代の受給者男性から2カ月にわたって不当要求に応じさせられた末に、相手を刺して負傷させた。死体遺棄容疑で起訴されたXさんと、殺人未遂容疑で起訴されたYさんは、2020年に執行猶予付き判決を言い渡された。
「暴力団関係者」「死体遺棄」「殺人未遂」といったキーワードには、「別世界」という雰囲気が漂う。そこに、「公務員なのに」という感情も重なる。
しかし、「若い社会人がクレーマーに遭遇」「経験の浅い社会人が自分史上初の困難に直面」といった状況は、どこにでもある。そこに職場や組織の課題が重なれば、事態はとめどなく悪化する。