いきなりベストを目指そうとする。すなわち、いきなり少ないインプットで、多くのアウトプットを出そうと試みてしまう。これがかえって非効率を生み、生産性を下げるケースが多々あります。

 ある程度こなれた業務であれば、可能な限り投入資源を減らす努力をする。これは至極もっともです。ところが、まったく新規の業務や、こなれていない業務でいきなり最小のインプットを目指すのはいかがなものでしょう?

 たとえば、あなたが新たにハンバーガーショップを始めるとします。チラシを配って、自分のお店のことを知ってもらいたい、来店してハンバーガーを食べてもらいたい。来てくれそうな50人に当たりをつけてチラシを配り、50人が来てくれればベストでしょう。

 しかし、最初はなかなかうまくいかない。まずは300人に配ってみて、どういう人がチラシを受け取ってくれるか? どの曜日や時間帯なら受け取ってもらいやすいか? 配る場所に問題はないか? そんなことを実地で学び、スタッフと一緒に振り返りながらベストな状態を目指していく。次は100人に配れば済むようにする。いわば、徐々にこなれさせていくプロセスも大事。一足飛びでやろうとしても、うまくいかないものです。

 また、商品企画などクリエイティブな業務においては、まずはとにかく多くの情報やネタ(これらがインプット)を仕入れ、そこからなるべくたくさんのアイデア(企画案)を考え、より良い企画を実現できるようにする。これも大事です。

 1の情報から、1の企画案を生み出し、その1の企画が通るに越したことはありませんが、それはあくまで理想。モノによっては、情報やアイデアの豊富さがいい企画を生み出す鍵。少ないインプットから、多くのアウトプットを出せる状態を目指すことが正解とは言いきれないのです。

生産性向上には「減らす」と「増やす」が必要

 企業で取り組んでいる働き方改革や業務改善は、どうも「減らす」一辺倒に偏りすぎているきらいがあります。

・作業時間を減らす
・会議時間を減らす
・残業時間を減らす

 もちろんそれも大事ですが、同時に新たな問題を抱えることになります。

・ コミュニケーションがなくなり、雰囲気がギスギスしてきた
・ 仕事を終えた後の振り返りをしなくなり、学びが減った
・ 常に時間に追われていて、言いたいことも言えなくなった
・「やらされ感」が増した
・ 仕事が雑になって、手戻りやクレームが増えた

 チーム内でのコミュニケーションの時間。学びあう時間。チームの外の情報を吸収する場や機会。

 これらは長い目で見れば、生産性をあげ、生産性を高い状態で維持し続けるための投資です。少ないインプット(場合によってはたくさんのインプット)あるいは質の高いインプットで、より多くの(またはより良い)アウトプットを出すためには、コミュニケーションの時間の確保、場作り、仕掛け作りは欠かせません。

「働き方改革」ムードが蔓延するなか、私たちはどうしても減らすことばかりに意識が向きがちです。しかし、減らすだけでは生産性はあがらない。ここにも大きな落とし穴があります。

 目指すは、ネガティブな仕事を減らして、ポジティブな仕事を増やす

 いま私たちに必要なのは、増やす勇気かもしれません。