逆の声もあった。

「お金持ちなのだから、当たり前じゃない?自分の子どもに裕福な生活をさせて、家を買ってあげるのが当然の条理だろう。これこそ家族愛というものなのだから。彼はまったく悪くないのだ!」

「日本の学生は家庭の経済事情と関係なくアルバイトをすることをよしとしているようだが、もし親がお金持ちなら、アルバイトの時間をもっと勉強に使い、たくさんの知識を得たほうがよいのではないか?」

「何?日本の男性は結婚のときに、まさか親からの援助なしで、自力で家を買うというのか!?」

 そして、中国に住む筆者の知人もこう言った。

「彼女はやっぱりまだ若いねー。もうちょっと年をとったら、何よりもお金が一番重要だということが分かってくるよ。男前、しかも、お金持ちの彼と別れたことを将来きっと後悔するよ」

成人して結婚しても
「親離れ」しない中国の若者

 これらのコメントからも、「現在の中国の事情」を読み取れる。

 中国では、今の20〜30代はほとんどが一人っ子である。

 1人の子どもの周りに6人の大人がいて、「小皇帝」のように大事に育てられてきた。小さいときから勉強一筋で、勉強さえできたら、家事や自分の身の回りのことをしなくてもいいとされ、そのまま成人になった人が少なくない。

 中国のネット用語に「媽宝男」(マザコン)という言葉がある。母親の言うことをなんでも聞く、何もかも親を頼りにするという意味だ。そして、中国はここ20年、不動産の価格が10〜20倍上がった。

 中国では、「家は自前でないと安心できない」という考えがあるため、結婚となれば、まず家を持たなければならない。しかも、男性側が不動産を用意する風習がある。

 もちろん、自分の稼ぎで家を買える人もいるが、多くは親の援助がないと、とても買えない。ゆえに、中国では「家を買うため、6人のポケットからお金を出す」というのが「常識」となっている。また「マンションを持つ」というのが多くの若者にとって一生をかけての夢にもなっている。

 中国は、経済の急速な発展に伴い、競争が激しくなってきた。特に90年代半ば以降に生まれたZ世代と言われる20〜30代の若者は「非常に早熟であり、クールで、かつ現実的」というふうに見られている。結婚は「自分にどういうメリットをもたらすのか」をまず考え、「花より団子」という経済的な安定を求める傾向が強い。

 このため、付き合う前に、真っ先に相手に聞くのが「不動産は持っている?車はある?」といった類いの質問である。

 以前、上海で開かれた「若者の結婚観を語る会」に筆者が参加した際、ゲストの専門家は「今の社会は拝金主義が蔓延し、現在の若者の『愛情よりお金』という結婚観を憂う」と述べていた。

 そこで、出席者がゲストの専門家に次のように質問した。

「今や、2人の男女が愛に燃えて結婚に至るのは、宝くじに当たるのと同じように難しいと思いますか?」

 すると、その専門家は「いいえ、宝くじに当たるより難しい」と答えた。

 やや極端な発言ではあるが、それくらい現在の中国の若者は結婚に関して、経済的要素を偏重している。上海や北京のような大都会のちょっとしたマンションでも1億円を超えるという異常な不動産相場が変わらない限り、「家持ちが成功の証」という世間の風潮は変わらないだろう。