とはいえ、リスキリングを進めるためには、スキルの可視化は避けて通れません。そこでまずは、「これから必要になるスキルを明らかにする」ことから始めましょう。これからどんな事業を展開するのか、それに従ってどんな仕事が生まれるのか、その仕事をする人にはどんなスキルが、どんなレベルで必要なのか、という順で明らかにしていくのです。

 この時、新しく生まれる仕事やその仕事で必要とされるスキルが具体的であればあるほど、リスキリングは進めやすくなります。例えば、社内で独自に構築した顧客管理システムを、大手ベンダーが提供するクラウド上に構築しなおす仕事、というように具体的にするのです。

 これから必要になるスキルが明らかになったら、いよいよいま社内で働いている人々が、どんなスキルを保有しているかを明確化しなければなりません。まずは、従業員に対して、自身が過去に経験した仕事を、部署や職種よりも一段深いレベルで記述してもらい、それをもとに、その人がその経験や仕事でどんなスキルを獲得したはずかという推定を重ねていきます。時間はかかりますが、データが蓄積されていけば、手間は徐々に減っていきます。

 ほかにも、趣味などで得られたスキルは、自己申告でなければ把握するのは難しいものです。そのため、申告することにメリットがある仕組み作りも大事になります。

 新しく生まれる仕事に必要なスキルと、いま社内にいる人々が保有しているスキルが明らかになれば、その間にあるギャップも分かります。これを明らかにしたうえで、それをどう埋めるかを計画することまでが、リスキリングの第1段階になります。

【ステップ2】学習プログラムを用意・提供する

 第2のステップは、新たなスキルを会得するための学習プログラムを取りそろえることです。

 世の中にはさまざまな学習プログラムがあります。もしも個人で自分のキャリアに必要なスキルを明らかにし、そのための学習に最適なものを膨大な学習プログラムの中から選別しようとすれば、たいへんな労力を費やさなければなりません。