また、学習に取りかかること自体のハードルを下げる工夫も必要になるでしょう。海外の企業を中心に、「Learning in the Flow of Work」(業務の流れの中における学習)という手法が注目を集めています。
これは、普段使っているパソコンなどのアプリケーション(たとえば、Microsoft TeamsやSalesforce、Google Workplaceなど)に、学習プログラムへのアクセスの入口を接続するもので、業務中などに分からないことが出てきたときに、1クリックで学習プログラムに飛べるのです。ちょっとした手間が省かれたにすぎないかもしれませんが、学習に取りかかる心理的なハードルを下げると言われています。
獲得スキルを可視化したり、学習に取りかかる心理的ハードルを下げたりする取り組みは、個人の学びを促進するだけではありません。従業員の学習歴や学習によって獲得したスキルが可視化できれば、社内で新たなチームやプロジェクトを発足する際に、社内における適材を探索するのにも有効となるでしょう。
【ステップ4】スキルを実践で活用してもらう
第4のステップは、学習プログラムで身に付けた新たなスキルをビジネスで活用してもらうことです。
リスキリングとは、企業の戦略が転換することによって、新しく生まれる仕事に必要なスキルを身に付けてもらうことですから、学習で獲得したスキルを、実際の職場や仕事で実践してもらうプロセスは欠かせません。ただし、実際にはスキルを習得してもらうことの方が先になり、そのスキルを使う仕事が社内にはまだ存在しないケースも起こりえます。
そのような場合に、新しいスキルを活用する場として、大舞台を準備する必要はありません。プロジェクトのトライアルやフィージビリティスタディのような小さなスタートでも十分です。座学やオンラインで学んだスキルを、実際に使ってみることを優先してください。
こうした取り組みは、リスキリングを統括する部署だけで成し遂げられるわけではありません。リスキリングを統括する部署とDXを推進する部署が、日ごろから密に連携を図ることが大切なのです。
(リクルートワークス研究所 アナリスト/研究員 孫亜文)
【参考文献】
リクルートワークス研究所「リスキリングする組織 デジタル社会を生き抜く企業と個人をつくる」