算数障害が原因で
対人トラブルを抱える可能性も

 熊谷氏によると、大人になるまで算数障害であることに気付かない人の多くは、数概念における「基数性」や、計算と文章題の理解に問題を抱えているケースがほとんどだという。

「『基数性』の理解が困難な人の場合、計算の操作自体は問題なくできるのですが、『3は1の3倍である』といった数の量的な性質が掴めません。例えば“30分”がどのくらいの時間なのかをイメージすることが難しいんです。このタイプは量に関わる把握が他の人と著しくズレたりするため、それが原因で対人トラブルを抱えるケースも見られます」

「また計算は、暗算と筆算に分けて考えます。通常の人は「1+4=5」といったレベルの簡単な数式であれば、かなり早い段階で数的事実として記憶してしまい、単純な加減算なら1秒程度で暗算することができます。しかし計算に障害を抱えている人は、数的事実が何歳になっても記憶に定着せず、どんな簡単な計算でも解くのに時間がかかってしまう。筆算の方では、機械的な計算の手続きがうまくこなせないために正答がでないことがあります。しかし、これらは電卓があれば日常生活に支障をきたすことがほとんどないため、算数障害として意識されにくいでしょう」

 熊谷氏によると、文章題において、立式ができなくても、だいたいの答えが出せるタイプと、立式はできるが、答えがとんでもない数になっても気づかないというような2つのタイプがあるという。推論を苦手とする人において、間違え方にこのような傾向が見られる場合、算数障害を疑ってもいいかもしれない。