努力不足のレッテルで
苦しむ人も多い

 脳機能、特に認知能力のアンバランスに問題があるとされる算数障害。残念ながら算数には、様々な脳の部位が関係するため詳しい部位はわかっていない。社会における認知度も低いため、算数障害を抱えている人の中には、周囲から「できないのは勉強する努力が足りなかったからだ」と決めつけられて苦しむ者も多い。

「算数障害の問題は小学生の児童期には顕著になりますが、算数というのは、テストで『できるか、できないか』、『○か×か』という2択しかないために、それに×ばかりついてしまうこと、計算などができないことは自尊感情に強い影響を与えることが指摘されています。先天的な理由によって計算ができないのにもかかわらず、周囲から努力不足のレッテルを貼られることで自信を失い、思春期や青年期には引きこもりや不登校などの『二次障害』に陥ってしまう危険性がある。それを防ぐためには、算数障害への世間的な理解が深まることに加え、当事者が算数障害であることを認識した上で、自分を決してダメな人間だと思わず、自分の得意な能力を生かしていくような発想に切り替えるしかありません。苦手なことを突き詰めすぎない。これが算数障害と向き合う上で大切なポイントなんです。また、最近では、障害のための合理的配慮がされる時代になってきました。それらもうまく活用するとよいと思います」

 ここで説明した算数障害の特徴にピタリと当てはまる人は、苦手な計算の習得に躍起になるのではなく、得意なことでカバーしていく方向に思考をシフトしてみるといいかもしれない。