大規模入所施設の構造的な問題
変えることができるか

 検討部会からは、現場を指導する施設の管理職や経営者層にも厳しい声が飛んだ。報告書には「人権擁護等の理念に基づく施設運営の未熟さ」「変革に向けたリーダーシップの欠如」などの指摘や苦言とともに、ガイドラインともいえる助言が記載された。

 その背景について、検討部会では「県立障害者施設は人里離れた場所に建てられていて、外部との交流や他施設と連携しにくいため、外部の目が入りにくい」「施設内で支援を完結させようとする閉鎖性もある」「このため、構造的に『管理性』や『閉鎖性』に陥りやすく身体拘束に頼る危険性がある」などの議論があった。

 その上で、上智社会福祉専門学校特任教員(委員当時)の大塚晃委員は「本人の立場に立ったら、何十年ものこんな厳しい鉄の扉の中での生活は人権侵害ともいえる。大規模な入所施設の構造的な帰結としてありうるもので、今後も身体拘束は起こり得ると思います」と強調した。

 そもそも、行動に課題がある人は静かで落ち着いた環境を好むため、集団生活に向いていない。つまり、大規模な入所型施設で管理された生活には無理がある。だから、行動を抑制せざるを得ない。

 また、検討部会では、障害者の人権を守る上での基本的な考え方として「利用者のためにはこれがいい」とする支援者側の目線でなく、「どんなに重い障害があっても、本人には必ず意思があり、支援を受ければ意思決定ができる」という「利用者目線の支援」を前提としてきた。障害者権利条約に基づく、時代を経た“パラダイム転換”といわれる。ここには「本人の望みや願いを第一に考え、本人の可能性を最大限に引き出す支援力」が必要になる。

 さらに、今回、施設見学をした検討部会委員からは「老朽化した建物の中で、いまの時代にそぐわない、利用者の貧しい生活環境を目の当たりにした」という声も出たそうだ。これは、知的障害者施設は1950~60年代に建設されたものが多いからだ(※2)。

 このような複合的な要因は30年以上前から指摘されてきたため、検討部会では「そのまま放置してきた国の責任も重い」という声も出た。「今後、大規模な入所型の県立障害者支援施設の解体も視野に入れた議論が必要ではないか」との意見もあった。