大学の中で、日本のアニメ鑑賞会や茶道体験会を実施

 ここからは、大学関係者に聞いた話をご紹介する。ヘブライ大学屈指の日本通で、同大学トルーマン研究所所長のニシム・オトマズキン氏は、「ヘブライ大学で日本研究が始まったのは1956年で、GHQの日本占領政策に関わっていたユダヤ人学者が立ち上げました。『中東で最も古い歴史を持つ日本研究機関』の名に恥じぬよう、ヘブライ大学には日本の漫画や日本語の本をそろえた小さな図書館が設置されています。日本語に直接触れることで、欧米の日本研究の焼き増しではない日本研究を目指しているからです」と語る。

ヘブライ大学が主催する日本関係の勉強会。実践的な知識と経験を得ることを目的にしているというヘブライ大学が主催する日本関係の勉強会。実践的な知識と経験を得ることを目的にしているという Photo by Yuki Tokunaga

 オトマズキン教授によれば、ヘブライ大学はアメリカ・ヨーロッパとは異なる独自の日本研究を志しているという。

「アメリカとヨーロッパの日本研究では、それぞれ、戦争体験とジャポニズム的な価値観に影響されています。中東にはそのような学術的なしがらみがないため、より自由に日本研究に向き合うことができます。その一環で、座学の研究だけでなく、学内にてアニメ鑑賞会や茶道体験会、さらには、日本へのフィールドトリップを実施して、学生たちが総合的に日本を理解する機会を提供しています。将来的には、ヘブライ大学が国際文化都市エルサレムを軸とする日本研究の交流地点になればいいと思います」

ヘブライ大学内の漫画図書館。色々と充実している。ヘブライ大学内の漫画図書館。色々と充実している Photo by Yuki Tokunaga

 イスラエルは人口約900万人と小さな国だが、中東のシリコンバレーとも呼ばれ、毎年数百ものスタートアップが起業されている“スタートアップ天国”である。ヘブライ大学のNPOマネジメント大学院に通うフリーアナウンサーの新田朝子氏は、東日本大震災を機に社会福祉に興味を持ち、イスラエルにやってきた。「社会起業家やスタートアップ関係者の話を聞ける機会が多いのも、イスラエル留学の醍醐味。クラスの半分以上の学生がユダヤ系ですが、多くはアメリカ出身です。その一方で、パレスチナ人、アジア人、ヨーロッパ人もいて、文化の多様性を感じる毎日です。私のコースには女性も多く、うち2人は授業期間中に出産をしていました。タフな人が多いなという印象を受けました」と話す。