(2)スタートアップ環境に身を置ける

 イスラエルのスタートアップ事業は日本でもよく知られているが、ヘブライ大学はその中心的な役割を担っている。ヘブライ大学が所有するベンチャー企業Yissum社は、大学で生み出された最新技術を実際の事業にインキュベートする役割を担う。

 例えば、自動運転技術を提供するモービルアイ社は日本でもよく知られているが、元々はヘブライ大学の研究者が立ち上げた会社だ。また、日本でもたくさん売られているミニトマト(チェリートマト)は、ヘブライ大学で遺伝子研究をしていた2人の教授が作り出したもの。そのため、ミニトマトの特許はヘブライ大学が持っており、今でも毎年莫大な特許料が大学の収入となっているそうだ。

 ヘブライ大学の学生たちは、スタートアップに関する教育を受けることができる。ヘブライ大学が提供するMBAコースはスタートアップに特化した授業も多く、毎年スタートアップ関係のキャリアに進む学生がいるそうだ。

(3)学費が安い
 教授陣は世界でもトップクラスの頭脳がそろう。にもかかわらず、イスラエルの大学は総じて学費が安い。日本の国立大学の年間の学費と大差なく、理系に至っては日本の大学よりも安い。

 例えば、ヘブライ大学(学部生)の場合、年間の学費は学部関係なく、文系でも理系でも一律1万3000シェケル(日本円で40万円程度)。国からの莫大な補助金がこれを可能にしている。欧米で活躍する教授の中にはイスラエルへの移住を志す人も多く、結果、世界中から優秀な人材が集まっている。これが欧米のトップ大学に匹敵するレベルの教育を格安で受けられる秘密だ。

ミサイルは怖くない?イスラエルの東大・ヘブライ大学の日常徳永勇樹氏による、イスラエル&旧ソ連地域についての記事一覧はこちらから

 もっとも、不安定な中東情勢の中心に位置する国である以上、日本と同じレベルの治安の良さとは言い難い(それでもおそらく、外から見るよりははるかに治安がいいが)。また、総じて物価は日本より高く、たいてい品質は価格に見合わない。例えば、レストランは非常に高い。ラーメンは1杯2000円である。

 このようにイスラエルはなかなかハードな国ではあるが、それでも、アメリカやヨーロッパの一般的な大学への海外留学では味わえない経験ができるのも事実である。海外の大学で学びたいという方は、ぜひイスラエルへの留学を検討してみてはいかがだろうか。