新聞やWebメディアが、システムの問題点を
報道することに問題はあるか

 その上で、AERA dot.毎日新聞(後に日経新聞日経クロステックも)が、システムに脆弱性があると報道したのは当然のことだと考える。特殊なツールなどを使ってシステムの穴を突いたなどの話ではなく、「適当な数字を入れたら通ってしまった」という程度のことを書くのは報道機関としては当然の態度である。国民の関心事が高いことであり、ニュースとして公益性が高い。さらに、記者が実際に試してみて事実であることを確認し、防衛省にも取材を行った上で記事化しており、記事制作のプロセスとしてもまったく問題がない。

防衛省の自衛隊大規模接種センターに関する特設ページ。防衛省の自衛隊大規模接種センターに関する特設ページ

 「防衛省が朝日新聞出版と毎日新聞へ厳重抗議というのはさすがにお門違いだ」と筆者は書いた。システム設計の専門家でなくても、ITに詳しい人であれば「いくらなんでもあの設計はひどい」と思うのは自然だと思うし、筆者も話を聞いたときには「ずいぶんユルい作りだなあ」と少々驚いた。

 それでも、防衛省の予約システムが、短期間でシステムを作り上げることを最優先したアジャイル開発思想で作られたものならば、まずは短期間でリリースしたことを評価すべきだろう。そして、岸大臣が朝日・毎日両社に言うべきは抗議ではない。「問題が起きる前に指摘してくれてありがとう。市区町村の予約システムと連携できないのは困ってるんだけど、急いで何らかの対応をするよ」なのではないだろうか。

(ダイヤモンド編集部 吉岡綾乃)

訂正 記事初出時より以下の通り訂正します。
4段落目:また、今回の申し込み条件を満たさない人(対象地域に住んでいない、64歳以下であるなど)がこっそり予約をしてワクチンを接種するといったことも簡単だろう。→また、今回の申し込み条件を満たさない人(対象地域に住んでいない、64歳以下であるなど)もこっそり予約できてしまうことになる。
(2021年5月20日13:32 ダイヤモンド編集部)