一方、「PRODUCE 101 JAPAN」はJ.Y. Park氏のようなプロデューサーが存在しない。「国民プロデューサー」と呼んでいるように、ファン自身が選考しているという感覚が強い。また、動画やイベント、SNSなどをチェックして自分が好きな練習生を見つけ出し、自分の1票で推しの練習生を育て上げている雰囲気を味わえるのだ。

「Nizi Project」はJ.Y. Park氏の選考に練習生が勝ち残れるかを見守る形になっているのに対して、自発的に自分の推しの魅力を見つけ出すので、練習生を応援したい気持ちが強くなる。その想いが高まり、応援広告にも力が入るのだろう。

 自分の応援広告の存在を知った練習生はSNSなどで感謝の気持ちを伝えており、それがファンに伝わってさらに応援したくなるというループに入る。国民プロデューサー制と応援広告によってファンと練習生の距離はどんどん縮まっていく。

応援広告に潜む
著作権問題をどう乗り越えるか

 応援広告でファンとアイドルとの新たな関係性が当たり前になりつつあるが、広告出稿に関しては問題点もある。アイドルの画像を使って広告を出すため、その画像の著作権や肖像権に触れるという点だ。

 韓国では広告のデザインの制限はほとんどなく、広告主の団体名が記載してあればOKで、著作権や肖像権に関する規制は緩い。韓国にももちろん著作権や肖像権はあるが、応援広告があまりに浸透していて、アイドル事務所側も宣伝になるからと黙認していることが多いのだ。

 日本では広告審査基準があり、出稿するにはその基準をクリアする必要がある。また、日本の芸能事務所は著作権や肖像権の管理に厳しく、許可なく写真を使って広告を出すと訴訟を起こされる可能性がある。また、日本では屋外広告や交通広告は基本的に個人での出稿が認められていないため、実在する団体であることが証明できないといけない。

 韓国では応援広告専用の広告代理店が多数あり、ファンはそこで広告を出している。日本でも応援広告に対応してくれる春光社、センイル広告エージェンシーJAPANといった広告代理店がいくつかある。また、応援広告支援サービスを行っている「Oshitai(オシタイ)」のように、広告の出稿だけでなくクラウドファンディングのように一緒に出稿したい人を募ってくれるサービスも誕生しているのだ。

 このように、日本で根付きつつある応援広告とその関連ビジネスだが、日本で韓国ほど応援広告の文化が根付いていない理由の一つには、日本で最も有名なアイドル事務所であるジャニーズ事務所の存在が挙げられるだろう。