その会社とは、ダディーモーターワークス社と言います。このプロジェクト、厳密には会社のオーナーでありエンジニアの尾頭邦宏さんによるもの。もともとエンジンスワップ(1台のクルマのエンジンを別のクルマに積み替えること)を得意とする彼は、「AE86レビン」のシャシーと「GRヤリス」用のロングブロック・エンジンを組み合わせて、夢の1台を計画しているのです。

 今回使用しているのは、「G16-GTS」という正式名称を持つ「GRヤリス」のロングブロック(エンジンを組み立てる工程で、エンジンブロックにシリンダーヘッドが取り付けられた状態のこと)とターボアセンブリー。いずれもトヨタから、直接調達したものとなります。

 そしてインテークマニホールド(エンジンに空気を送り込むパイプおよび、補機類のこと)は、尾頭さんによるオリジナルです。エンジン制御システムに関しては、市販のモノが使用されています。

 残念ながらこれらの組み合わせは、接続すればすぐに機能するというわけではありません。新たに付け替えようとしているエンジンは、もともと「AE86」に搭載されていたエンジンと比べて高さがあるため、従来よりも上に8cm、下に2cmほどはみ出たカタチで取り付ける必要があります。しかしながら、全長には大差なく、尾頭さん独自のV字型の冷却装置を用いることで、設置自体は完成を迎えようとしています。

【現状でのプロジェクトの動画】

 これまでのところ、必要な部品のほぼ全てを他のクルマから調達しています。ステアリングラックが、マツダの初期型「ユーノス・ロードスター」であることを除けば、「クラウン」のリアエンド、「アルテッツァ」のデフ、「エスティマ」のリアディスクブレーキ、そしてZN6世代の「86(ハチロク)」のマニュアル・トランスミッションと、ほぼすべての部品がトヨタの純正パーツとなります。

 尾頭さんいわく、「より挑戦的なチューンナップのバランスを追究するために、『86』以外のトランスミッションを模索中」とのことです。

 ダディーモーターワークスがこのクルマを仕上げるまでには、あと半年ほどの作業日数が見込まれています。長く愛されてきた同一メーカーのエンジンとシャシーのマリアージュという画期的な試みとして、おそらく2022年の東京オートサロンの目玉の1つになることでしょう。ぜひ実現してほしいものです。

Text by Ryutaro Hayashi and Fred Smith
Source / Road &Track
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。

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