監視体制の強化とともに
患者も声を上げることが大事

 既に、ジェネリック医薬品なしにはわれわれの健康生活は成り立たないところまで来ており、単純に使用を拒否するだけでは、身を守ることはできそうもない。ではどうしたらいいのか。

「不正を防ぐには、監視体制の強化しかないと思います。

 第一に、都道府県の監視員による抜き打ち検査を増やす、監視員の技術レベルをアップさせる。

 第二に、既に流通しているジェネリック医薬品を集めてきて再試験をする『一斉監視指導』を増やす。現在年間900品目について、都道府県の試験場で承認時と同じ試験で品質の確認をしています。この試験の頻度を増やすことは有効でしょう。試験の結果、不適応であることがわかり、回収につながっている例は少なくありません。

 第三として、『患者の声』を届けること。PMDAには患者さんの相談窓口があるので、医薬品による副作用などが疑われる場合には積極的に報告するのがよいでしょう。日本のユーザーは世界一厳しいことで知られているので、世界の医薬品の品質と安全性の向上に貢献できると思います」

 本問題に深い関心を寄せる医師の中には、「AG(オーソライズド・ジェネリック)を選べば安心だ」とする声もあるが、武藤氏は首を横に振る。

「AGとは、先発品と同一の有効成分、同一添加剤、そして同一適応を持ち、さらに先発メーカーからお墨付きを得たジェネリック医薬品、要するに、AGは先発品と全く同じ薬です。

 ただ、実はAGにも種類があります。

 簡単に言うと、パターン1は、先発品メーカーのラインの一部をAG用としているだけで、あとは全く同じ。包装と添付文書だけ変えた薬です。

 パターン2は、料理で言うところの材料とレシピは同じだけど、キッチン、つまり工場だけ子会社で作らせる。キッチンもコックさんも変わるわけですから、先発メーカーがお墨付きを与えているというだけで、普通のジェネリックと全く変わらない。こういうAGは多いです。

 さらにパターン3では、レシピが同じだけで、原材料も工場も違う。安い原材料を海外から輸入し、製造は子会社。こうなると完全にジェネリックと同じ。

 先発品メーカーはこうした情報を開示していません。自社ブランドのイメージが損なわれると思っているのでしょう」

 新型コロナウイルスの影響で、昨今は特効薬やワクチンに対する関心がかつてないほど高まっているが、前々からある薬にももっと関心を持つべきだ。問題が起きたり、疑問が生じたりした際には社会と共有する。それが、日本の医療の質と安全性を向上させ、われわれ自身を守ることになる。

(監修/日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会代表理事、社会福祉法人日本医療伝道会衣笠病院グループ相談役 武藤正樹)