駆動用バッテリーを床下に敷き詰めるピュアEVの場合、高床構造が必然。そのため“ずんぐりプロポーション”になりがちだ。そうした弱点をカバーするため、SUVカテゴリーを選択するモデルは少なくない。そんな中であえてセダンに仕上げたタイカンは、後席足元部分にバッテリーを置かないスペースを設定。フル4シーターパッケージングと、911由来の“フライライン”と呼ぶ後ろ下がりのルーフラインを両立した。誰もが“ポルシェ”とわかるシルエットだ。

 車検証表記の車重は2340㎏。大柄なサイズに加え、大容量バッテリーや4WDシステム、3チャンバー式の凝ったエアサスペンションを搭載したため重量級になっている。ところが驚くことに、走り始めるとそうしたスペックを意識させない。軽快、そして敏捷な動きを示す。この点がタイカンならではの特徴だ。アクセルの微細な操作にリニアに反応し“911よりも低い”という重心高がもたらすロールを感じさせないボディの動き、コーナーのターンインではコンパクトなスポーツカーのような身のこなしが楽しめる。このドライビング感覚は絶妙である。

魅惑のエレクトリックサウンド、
卓越のボディコントロール性

 テスト車には、オプションのエレクトリック・スポーツサウンドが装着されていた。スピーカーを通じフェイクサウンドを流すシステムだ。それはエンジン音を模したものではない。「モーター音をモチーフに吟味を重ねた」という未来的で躍動感あふれる音色は好印象だった。もしタイカンを手に入れたら、スイッチを常時ONにして乗ることになるだろう。

 0→100km/h加速タイムの公表値は、3.2秒。スーパースポーツカーに匹敵するデータを確認するまでもなく、全力加速時の速さは圧倒的だ。高まるエンジンノイズと無縁なので、心理的な抵抗なく強力加速を堪能できる。これはBEVならでは。そして、穏やかに走ろうと思えば、“それも自在”という2面性を持ち合わせる。右足に加える力加減だけで、加速ポテンシャルを思いのままにコントロールできる。