夢と課題を同時に
突き付けられた試乗

 タイカンで動力性能以上に感動的だったのは、巧みなボディコントロール能力だった。

 走り始めの瞬間から、高速道路上のクルージングまで、フットワークのテイストは「かつてこれ以上のフラット感に出会った経験がない」といいたくなるレベル。フロントが265/ 35 、リアが305/30の21インチというタイヤサイズが信じられないほど、穏やかで軽やかな乗り味に舌を巻いた。

 無駄なボディの動きが見事に封じ込められているので、長時間のドライビングでも疲労感は最小限。「これほど優れたボディコントロール性を示すセダンは他にない」と言い切れる。

 一方、バッテリー残量が低下して充電のことを考え始めると、気持ちはどうしても憂鬱になる。1充電当たりの走行可能距離は450km(WLTPモード)。BEVとしては十分とも思えるレベルだが、それは大容量バッテリー(83.7kW)の賜物。普通充電ではフル充電まで30時間以上という気が遠くなるほどの時間がかかる。高速道路上やロードサイドでの急速充電では“30分まで”と制限される場合が多く、時間内で補充できる電力量はわずかにすぎない。

 タイカンに限らず、大容量バッテリーを備えたEVの場合、“大出力充電器”とのセットでないと使い勝手は著しく悪くなってしまう。夢と課題を同時に突き付けられた試乗だった。

(CAR and DRIVER編集部 報告/河村康彦 写真/小久保昭彦)

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