ところでサントリーは、既に「-196℃ ストロングゼロ」という、旧世代RTDの大ヒットブランドを有している。

「ストロングゼロ」の特徴は、果実を皮ごと-196℃という極低温で凍結させて粉砕し、ウオッカに浸す特許製法で、果皮の香りを引き出したことだ。同社では、居酒屋で飲む生搾りのサワーがなぜおいしいのかという疑問から出発し、果皮の香り成分に理由があることを突き止めた。果汁だけでなく果皮、種、繊維と果実の全てを味わう手法として開発したのが、先述の特許製法であった。

 なお、「こだわり酒場のレモンサワー」の購入層は、「ストロングゼロ」よりもやや若く、30代以上、特に女性に人気があり、すみ分けができているようだ。

健康志向を意識した
商品も登場

 そのほか、宝酒造では、18年3月に「極上レモンサワー」を発売。この商品も、「檸檬堂」や「こだわり酒場のレモンサワー」と同様に、スタッフが実際に飲み歩いた名店のレモンサワーを参考に開発している。ベースアルコールには宮崎県高鍋町の同社焼酎工場「黒壁蔵」で醸造された、樽貯蔵熟成焼酎を使用し、フレーバーごとにブレンド。レモンも、手間暇かけてさまざまな素材を使用して、ピール感のような複雑な味わいを追求した。甘味料ゼロ、プリン体ゼロであることも特徴だ。

 サッポロビールでは、今年3月2日に「濃いめのレモンサワー」を発売。果汁は1%しか入っていないにもかかわらず、濃厚なレモン感が出せるところに、系列のポッカサッポロの「ポッカレモン」や「キレートレモン」で培った見識と技術が生かされている。早くも年間販売計画を280万ケースから380万ケースに上方修正する好調ぶりだ。

 一方で、居酒屋に学ぶのではなく、独自の切り口でレモンの味わいを深める動きもある。

 キリンホールディングスでは、健康志向の高まりを受けて、発酵の技術を取り入れたレモンサワーで新境地を開拓している。

 その第1弾として、昨年10月に「キリン 麹レモンサワー」を発売した。この商品では同社のRTDで初めて「麹」を使用。麹の作用により、丁寧にレモンのうま味を引き出していると人気になった。今年3月16日には、第2弾として世界初の発酵レモン果汁入りサワー「麒麟 発酵レモンサワー」を発売。わずか4日で、出荷数が1000万本を突破した。

 そもそも、かんきつ系サワー缶の存在を世に知らしめたのは、キリンが2001年に発売した「氷結」であった。「氷結」は、それまで焼酎がベースになっていたサワーの常識を覆し、ウオッカをベースに、クリアな飲み口と圧倒的な果汁感により大ヒット商品となった。従来品は、濃縮果汁を薄めて使っていたのだが、非加熱の氷結したストレート果汁を使用したのだ。

 キリンでは看板の「氷結」も健在ながら、発酵をキーワードとした新しい味の開拓に熱心だ。