ドル下落Photo:123RF

5月の米コアCPIは29年ぶり高水準
世界でも目立つ米国のインフレ率上昇

 米国の5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.0%上昇と、伸び率は4月の4.2%からさらに加速し、原油価格高騰の影響を受けていた2008年8月以来の高水準を記録した。食品とエネルギー価格の影響を除いたコアCPIも前年同月比3.8%上昇と、4月(3.0%上昇)から一段と加速し、1992年6月以来約29年ぶりの高水準となっている。

 足元のインフレ率上昇は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、昨年前半のインフレ率が極端に落ち込んでいた反動という側面も強い。従って、コロナの影響で落ち込んだ分の影響を排除するため2年前との比較で見ると、CPI全体の上昇率は5.2%、コアCPIの上昇率は5.1%で、2年間を通じてみれば、おおむね年間平均2.5%程度の上昇ということになる。

 コロナ前の3年間(17年~19年)の米国のCPI前年比の平均値は、全体もコアも共に2.1%上昇であった。20年~21年のコロナ禍の2年間が年間平均で2.5%程度のインフレ率ということは、米国の物価はコロナ感染拡大の影響を全く受けなかったどころか、むしろやや加速しているとも言える。

 一方、その他の国はそういうわけにもいかず、CPI前年比の世界全体の加重平均値と米国との差は、4月時点で1.4ポイントまで拡大している。5月は世界の加重平均値がまだ明らかではないため不明だが、恐らく4月と同程度の差が維持されているか、それ以上の差となっているだろう。米国のインフレ率が、世界のインフレ率加重平均値に比べ1.4ポイントも高くなったのは、05年9月以来のことだ。

 このように米国のインフレ率の高さが目立つ環境にあって、為替市場では米ドル相場にいかなる影響を与えるのか。次ページ以降、今後の見通しやその背景について詳述していく。