特集『業績 再編 給与 5年後の業界地図』(全16回)の#10では、増益基調の企業が多い医療機器業界を深掘り。低侵襲の医療機器は需要が多く、参入障壁も高いため、今後も安定成長が期待できる。特に、オリンパスとテルモは世界での飛躍が期待でき、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)ではエムスリーの快進撃が続くのかにも注目が集まる。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
世界的な高齢化で手術数が拡大
承認取得が難しくて参入障壁も高い
東京証券取引所33業種の中で、直近3年間(2018年6月~21年5月)で最も株価のパフォーマンスが好調だったのが、医療機器メーカーの多くが分類される精密機器セクターだ。また、近年注目されている医療ITセクターもコロナ禍で業績を大きく伸ばした。
新型コロナウイルスの感染拡大による影響が長引いても、その他の疾患が減るわけではない。医療供給体制の変化により、一時的に業績が踊り場になっていた企業も、年後半以降は成長軌道に回帰するはずだ。
実際、医療機器大手のオリンパスの今期の会社計画は50%営業増益。営業利益率も16%で共に過去最高を見込んでいる。
世界的な高齢化で手術数が増加する一方で、医療機器は参入障壁が高く、5年程度では変化が少ないセクターである。なぜならば、年々、医療機器の承認取得のハードルが上がっており、医師とのコネクションも重要だからだ。
「人の命」に関わる分野だけに、エビデンスが重視される。そのため既存のプレーヤーが強く、スマートフォンのような劇的なゲームチェンジは起こりにくい。
とはいえ、全ての会社が同じ成長曲線を描くわけではない。
医療機器セクターが追い風の中でも、10年以上続いていた増収増益がストップして、連続増配も18期でストップした企業もある。一方、大幅減益から復活し、世界シェアを伸ばして今まさに飛躍しようとしている企業もある。
今後の利益成長も、5年後の利益が前期比で3倍近くなると市場が予想している企業もあれば、伸び悩むと想定されている企業もある。医薬セクター同様に、医療財政の逼迫で医療機器も重要度により、成長率や利益率に明暗が出てくるだろう。
医療機器セクターのアナリストランキング1位である大和証券の葭原友子シニアアナリストは、今後5年間の注目ポイントとして、次の3点を指摘する。