長年業績が低迷していた映像事業の売却を決め、経営指標ROIC(投下資本利益率)の数値向上が期待される医療機器大手のオリンパス。稼ぐ力が厳密に問われる指標故に、予期せぬコロナ禍に見舞われた今、一段の「聖域なき構造改革」を迫られそうだ。特集『超楽チン理解 決算書100本ノック』(全17回)の#3ではその展開をROIC経営の観点で予想した。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
お荷物の映像事業が「立つ鳥跡を濁す」
“売却”なのに今期予想は最終赤字
お荷物の映像事業を断腸の思いで売却すれば身軽になり、あとは医療事業が稼いで、経営指標の目標を達成する……。
オリンパスは近年赤字続きだった映像事業(主にデジタルカメラ)を日本産業パートナーズへ売却することを9月末に正式決定した。しかし、描いていたストーリーの実現は簡単ではなさそうだ。
オリンパスが2021年3月期第2四半期決算を発表し、売上高3165億円、営業利益302億円、最終損益マイナス227億円となった。
前年同期比は売上高マイナス518億円、営業利益マイナス255億円、最終損益マイナス587億円と厳しい数字となった。通期業績予想も最終損益は、医療事業関連で損失引当金を計上した15年3月期以来の赤字予想となった。
コロナ禍による販売減もあるが、赤字の主要因は立つ鳥が跡を濁したこと。映像事業の売却にかかる費用が膨らんでしまったのだ。
もともと売却額(非開示)は小さいとみられていたが、「黒字化を見込める事業構造にした上で売却」という条件が、想定以上にマイナスインパクトをもたらしたのだ。具体的には、譲渡関連費用(生産設備の減損、在庫の評価損など)として505億円を計上することで、通期業績に大打撃を与える結果となった。
そして映像事業の「断末魔」以上に重要なのは、医療事業の伸びだけで本当に強くなれるのか、稼げるのかという点だ。それは、オリンパス自身が掲げる経営指標「ROIC(投下資本利益率)」の推移を追っていけば明らかになる。オリンパスは「高望み」ともいえるROICを設定しているのだ。
実は、決算書をひもとけば、その高望み目標をかなえるためには「映像事業の次」の売却すら視野に入ってくる。解説していこう。