業績 再編 給与 5年後の業界地図#15写真提供:村田製作所

積層セラミックコンデンサー(MLCC)が高い世界シェアを誇り、スマートフォン向け電子部品の好調などで今期の最高益を見込む村田製作所。特集『業績 再編 給与 5年後の業界地図』(全16回)の#15では同社の中島規巨社長に、米中対立の影響が直撃した5G(第5世代移動通信システム)を巡る新戦略や中長期的に生死の鍵を握る脱炭素への対応などを直撃した。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

5G拡大の青写真に米中対立の逆風
中島社長が恐れる「最悪シナリオ」とは?

――コロナ禍の中で社長に就任して約1年がたちました。2022年3月期時点で売上高2兆円などの目標を掲げる「中期構想2021」の達成の手応えは。

 就任間もない時期に米中のデカップリング(分断)の問題や新型コロナウイルスの感染拡大など、アンラッキーな面はありました。

 残念ながら米中デカップリングの影響は無視できません。昨年の米国政府による中国ファーウェイ(華為技術)への制裁や、米商務省によるEAR(輸出管理規則)強化の問題などは、もろに売り上げの伸びを鈍化させました。

 売上高2兆円の目標達成は非常に厳しい状況にあると思いますが、中期構想ではどちらかというと利益にこだわっています。営業利益率17%や、資本効率を上げるための経営指標にしているROIC(投下資本利益率)20%は、射程圏内に入っており、今年一年を通じて近づけていきたい考えです。

――本特集でテーマの5年後を見据えたとき、業績面でどんな姿をイメージし、重視したい指標とはどのようなものでしょうか。

 私自身はやはり、資本主義で活躍する企業として利益にこだわりたい。今ターゲットにしている営業利益率の17%、ROIC20%は変わらず、26年に向けても掲げていくべき目標だと思っています。

 ただ間違ってはいけないのは、同時に中長期的な目線に基づき、先の見えない将来に対して大きな投資を継続することもサボらないことです。そのバランスのかじ取りが課題だと思っています。

――部品販売の「モノ売り」だけでなく「ソリューション提供」にも領域を広げる事業ポートフォリオ改革を進めています。

 私は「3層のポートフォリオ」という言い方をしています。

 まず高い成長が見込める1層目のコンポーネントビジネス(主力の積層セラミックコンデンサーを含む汎用性の高い部品)、2層目の用途特化型ビジネス(フィルターやセンサーなどの複合部品)を伸ばしながら、3層目のソリューションビジネス(ソフトウエアやサービスなど)にも挑戦しようとしている形です。

――通信領域の大きな柱となる5G(第5世代移動通信システム)の未来図をどう考えますか。

 恐らく今後3~4年はスマートフォンの利便性を上げるツールになる。これが5Gの第1段階です。

 5年後に向けては5Gの第2段階。つまり、モバイル機器以外にも用途が広がっていく。(特定敷地内でデータ通信を完結する)「プライベート5G」を含め、工場稼働率の管理や在宅医療、生体情報や自動車の安全走行などで使われるインフラになっていくでしょう。

――その5Gに米中対立という大逆風が吹き付けました。

 米国は民主党のバイデン政権となり、今後も人権的な課題の多い中国と接近することはないと思います。その中でどのようにものをつくり、どこを顧客ターゲットにして地域、顧客を含めた戦略を練るのか。これから瞬時に変えていかなければならないのがリスクであり、最も困難な課題です。

――具体的に今後、米中対立への対応はどのように進める考えですか。