業績 再編 給与 5年後の業界地図#11Photo:Henrik5000/gettyimages

特集『業績 再編 給与 5年後の業界地図』(全16回)の#11では、気鋭アナリストとして知られるナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表が、自動車大手6社の業績を定量的に示すとともに市場動向を分析。さらにこの先、自動車業界で「CASE(接続、自動運転、シェア&サービス、電動化)革命」による大転換がいつ起きるのか、戦略の分岐が進む国内勢大手3グループの行方と併せて展望する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

「CASE」 は自動車会社の業績にどう影響?
気鋭アナリストの予測シナリオを明らかに

 約540万人の就業者数を抱える日本の基幹産業、自動車業界に今、「CASE(ケース)」という名の大波が押し寄せている。C(接続)、A(自動化)、S(シェア&サービス)、E(電動化)の四つの流れにより、モビリティが大変革期を迎えようとしているのだ。

 一大トレンドによって、自動車業界に関わるステークホルダー、企業の裾野が一段と広がりを見せようとしている。あなたが今、車に直接関わりのない企業で働いていたとしても、今後も無関係でいられるとは限らない。

 なぜなら、新時代は自動車がIoT(モノのインターネット)の枠に組み込まれ、「ネットにつながった車」として新たに膨大なモビリティサービスを生み出そうとしているからだ。この革命が進むと、ライドシェアやロボタクシーのようなサービスを連続的に使い分ける次世代交通サービス「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」として具現化されていくことになる。さらに、グローバルでガソリン車からEV(電気自動車)シフトの流れもかまびすしい。

 トヨタ自動車の豊田章男社長も、こうした流れを念頭に「100年に1度の大変革期」だと訴え続けており、脱ガソリンを巡る動きも続々と伝わる。それぞれのキーワードを耳にしたことがある人は多いだろう。一方でこの変革がいつ本格的に到来し、自動車会社の業績にどのように影響を与えるのかまでを、すぐに答えられる人は少ないのではないか。

 得てして市場は過度に期待を織り込むきらいがあり、EV最大手の米テスラの時価総額が急拡大を続けてきた現象を知っている人は、世界中の自動車のEV化がすぐにでも訪れかねないイメージを持つかもしれない。ただ、自動車業界の気鋭アナリストとして知られるナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表が描く未来図は、そのような単純な姿ではない。

 まずは、足元の状況とどんな変化が起こり得るのか、時間軸と共に冷静な分析こそが重要だ。そこで次ページでは、中西氏が予測する自動車大手6社の5年後までの業績を定量的に示すとともに、今後の市場動向を分析する。

 さらにこの先、CASEによる大転換がいつ起きるのか、戦略の分岐が進む国内勢大手3グループの行方と併せて展望。日産自動車に関しては、足元の業績が厳しいものの、実はCASE革命の中で「大逆転」シナリオに至る可能性が浮上している。その姿についても明らかにしていこう。