つまり、「左折をなくすことで、全ての問題が解決する」という話ではないことは明確です。その点を踏まえ、今回の研究では「左折の回数の増減に関して、最適なバランスを求めること」に焦点が当てられているのです。

都市部と郊外でも違いが出る!?

 ペンシルバニア州立大学の研究チームは、完全なグリッドと不完全なグリッドを用意し、その上で3種類のアルゴリズムを試しています。この場合の不完全なグリッドとは、人々が実際にクルマを運転する現実の都市の道路に近いモデルとなります。

 今回の研究論文の主筆であり、ペンシルバニア州立大学で交通工学を研究するヴィカシュ・ガヤー教授は、「研究結果は幅広く応用できるものである」と述べています。

 学術系ウェブメディア「ザ・カンバセーション(The Conversation)」に寄稿した記事の中でガヤー教授は、「左折規制については、都市中心部などの交通量の多い交差点において、郊外の交通量の少ない交差点よりも効果が高いことが判明した」と述べています。

 より多くの人々の移動が行われる交通量の多い交差点において、左折規制の影響が大きく現れるという指摘は理に適ったものと言えるでしょう。都市部での運転であれば代替ルートの選択肢も幅広くあり、「右折回数の増加は大した問題にはならない」というのがガヤー教授の結論です。

 この論文の中に一点、興味深い指摘が1つありました。「そもそも、大き目の交差点で左折するクルマは少ない傾向にあります。したがって、左折を削除することによる悪影響は、比較的小さいと推測できます」と、ガヤ氏は説明します。

 それは、人々がすでに「左折」は残忍なほど危険な行為であり、避けるべきであるという先入観が根づいている証と言えるのではないでしょうか。

 ここまでの議論を経て、交通法規では右側通行となっている日本は、今後何かしらの施策が打たれるのでしょうか?

Text by Caroline Delbert and Ryutaro Hayashi
Source / POPULAR MECHANICS
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。

日本では右折を禁止すべき?「左折を制限せよ」という米国の研究が話題