海外の節税#13Photo:PIXTA

ここ数年、国税庁がいわゆる節税保険に大なたを振るい、長らく繰り広げられてきたいたちごっこに終止符を打つと宣言した。だが、逓増定期保険を活用した「名義変更(資産移転)プラン」にはまだ裏技がある。特集『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の#13では、その驚きの手口を開陳しよう(トリプルコンフィデンス代表 朱孝)。

国税庁が節税保険にメス!
バレンタイン&ホワイトデーショック

 法人向けのいわゆる節税保険を巡り、保険会社と国税庁は長年いたちごっこを繰り返してきた。保険会社は合法的に節税できる保険商品を開発し、それに税務当局が規制をかけると、網の目をかいくぐるかのようにまた次なる商品を生保が販売するという、頭脳戦が繰り広げられてきた。

 これら節税保険は、表向きはあくまでも生命保険だが、法人側にとっては決算対策の手軽な手段として好都合だった。節税保険マーケットは外資系生命保険会社がメインプレイヤーだったが、2015年ごろから大手生保も参入し始めた。代表的なものが、日本生命保険の傷害保障重点期間設定型長期定期保険「プラチナフェニックス」である。

 プラチナ型節税保険は、保険料の支払い時に全額損金算入できるだけでなく、解約返戻率が高いことに加え、アベノミクスによる好況も手伝って販売件数が大幅に伸びた。税務当局も目をつむっているわけにはいかなくなり、ついに19年2月に大なたを振るった。これが、いわゆる「バレンタインショック」であり、解約返戻率に応じて損金参入割合が決まるという通達が出され、プラチナ型節税保険のうまみは消え去った。

 さらに21年3月には、低解約返戻金型逓増定期保険を利用した「資産移転プラン」、いわゆる「名義変更プラン」にメスが入った。先のバレンタインデーショックとの対比で、「ホワイトデーショック」と呼ばれている。そして、同年7月の通達(適用は19年7月に遡及)により、解約返戻金が低く抑えられている期間に、法人から個人に名義変更し、解約返戻率が跳ね上がった時点で解約するという節税手法は事実上使えなくなった。

 まさに、節税保険は完全に息の根を止められたかのように見えるが、そうではない。道は残されているのだ。通達の適用時期である19年7月以前に契約した保険であり、数社の保険会社の商品に限られるが、「裏技」が使えるからだ。この方法を使えば、無税で解約返戻金をほぼ全額受け取ることができる。

 次ページ以降では、名義変更プランによって生じる法人と個人の税額の差を比較した後に、名義変更プランを活用した「裏技」を披露しよう。