海外の節税#17Photo:PIXTA

富裕層の相続対策といえば、不動産への有利な税制に着目した新築一棟マンションへの投資を連想しがち。しかし、目ざとい富裕層たちは目下、100万円など比較的少額から購入できる「不動産小口化商品」も相続対策に活用し始めている。特集『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の#17では、税理士法人チェスターの荒巻善宏代表がその活用法を伝授する。

贈与税、相続税とも条件次第で
課税額が10分1にまで圧縮!?

 目下、富裕層の新たな相続対策として、不動産小口化商品の中でも特に人気を集めているのが「任意組合型」と呼ばれるタイプだ。複数の投資家が賃貸マンションの「組合持分権」を購入し、出資額に応じてその物件から得られた収益が分配されるという仕組みの商品である。こうした不動産小口化商品を用いた相続対策で、大きな成果を期待できるのが「生前贈与」だ。

 生前贈与を行う際の注意すべきポイントは、その基礎控除(もらう人1人当たり年間110万円)を超えると、相続税と同じく最高税率55%の贈与税が課される点だ。

 しかも、“現金”の生前贈与にはさらに二つの落とし穴がある。まず、一つ目は、同じ資産価値の不動産と比べて贈与税の負担が重くなること。そして、前述した年間110万円以内にとどめていても、毎年同じ時期に同額の現金による贈与を繰り返していると、「定期贈与」と見なされて贈与税が課される恐れがあることだ。これを防ぐには、贈与のたびに贈与契約書を作成して押印する必要が出てくる。

「毎年同じ時期に同額の生前贈与」をすると定期贈与を疑われる点は、不動産小口化商品の場合も同じ。例えば、最初にまとめて10口を購入し、翌年以降に1口ずつ分け与えていく場合も、贈与契約書をその都度交わす方が賢明だ。

 だが、不動産小口化商品を用いた生前贈与は、現金のケースと比べて計り知れないメリットがある。贈与税の負担がはるかに軽くなり、さらに相続発生時にも威力を発揮するのだ。

 次ページからは、条件次第で課税額が10分の1未満にもなるその絶大な効果を、シミュレーションを用いて解説しよう。