海外の節税#15Photo:PIXTA

相続と不動産は切っても切れない関係にある。地主はもちろん、相続財産の多くが自宅を含めた不動産という富裕層が少なくないからだ。それ故、適正な不動産評価が行われなければ、相続税を払い過ぎてしまうことも。特集『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の#15では、実際にあったケースを基に、不動産評価額の見直しによって払い過ぎた相続税を取り戻すマル秘テクニックを見る。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

土地には評価額に
直結する“個性”がある

 相続税対策の中でもひときわ、威力を発揮するのが「不動産」だ。富裕層ではなくとも相続財産の大半は、自宅を中心とした不動産であるからだ。それは、本特集#8の『富裕層流・不動産相続の極意は「負動産→収益不動産」の組み換え術にあり!』でも見た通りだ。

 本稿の目的である、不動産評価の見直しによる相続税の取り戻し術を解説する前に、まずは不動産と相続に関する三つのポイントを簡単に押さえよう。

 一つ目は、相続財産としての土地は公示価格の約80%で評価されるという点だ。この公示価格と相続税評価額の差は、不動産価格の変動が激しいエリアでより大きく表れがちだ。

 次のポイントは、賃貸アパートなど他人に不動産を貸している場合、権利が制限されるため、大幅に土地・建物の評価が下がることだ。東京近郊の一般的な例でいうと、住宅地の借地権はおおむね更地価格の60~70%だ。建物も一緒に貸していれば、その土地は貸家建付地として「借地権割合×借家権割合」が減額され、建物は貸家として評価は1~30%減額される。

 最後の三つ目のポイントは、土地の形状などの“個性”によって、評価額が大きく異なるという点だ。

 その代表的な制度が、2018年1月にそれまでの「広大地の評価」に代わり新設された「地積規模の大きな宅地の評価」だ。地積1000平方メートル以上(三大都市圏は500平方メートル以上)で、地区区分が普通住宅地区か普通商業・併用住宅地区、そして容積率400%未満(東京23区は300%未満)という要件を満たせば、単純な評価額に比べると約2~3割、評価額を減額することができる。加えて、「地積規模の大きな宅地の評価」は重複適用できる減額も多く、組み合わせによってはさらに大きな評価減につながることも。

 そして、これほどの減額効果はなくても、例えば旗竿地など土地の形状がいびつな場合、不整形地補正によって評価額を下げられることは一般にもよく知られている。

 だが、不動産評価の方法は複雑多岐にわたるため、本当は評価額を下げられるにもかかわらず、それを見落としてしまい相続税を過大に納めてしまっているケースは後を絶たない。

 そこで次ページから、相続・不動産コンサルティングを手掛けるフジ総合グループ(フジ相続税理士法人・フジ総合鑑定)の協力を得て、実際に相続税を取り戻すことができた最新事例を解説しよう。そのキーワードは、「現地調査」だ。

「机上の評価だけでは、その土地の隠れた個性を見落とすことも少なくない。所有する土地の数が多かったり、個性の強い土地を持っていたりする人は、綿密に調査しなければ評価額が100万円、1000万円単位で変わることもある」と、フジ総合グループの藤宮浩代表は指摘する。

 場合によっては、あなたが支払った相続税も取り戻せるかもしれない。