日本国内で販売されている生命保険に比べて、海外で加入する生命保険は利回りが高いことが多い。その保険を求めて、かつて海外生保ツアーが組まれたほどだが、原則日本の居住者は法的に加入することはできない。また、詐欺やクレームが多発しているのも事実だ。特集『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の#18では、そうした事情を解説していこう(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
富裕層がこぞって加入する
海外の生命保険商品
富裕層の節税術のひとつとしていまだ根強い人気があるのが、海外で加入する生命保険だ。なぜなら、日本で入る生命保険よりも、海外の生命保険の方がはるかに利回りは高く、支払った保険料よりも大きく返戻金が増えるケースが多いからだ。
「同じ外資系生保の同じような生命保険でも、日本と海外では利回りが全然違いますよ」と、複数の税理士たちは言う。
理由はさまざまあるが、契約者保護の観点から制限の多い日本の保険会社の運用手法に比べて、海外の生命保険の方がアグレッシブな運用を行えることがある。
次に、「海外の生命保険は手数料が開示されており、複数社の保険商品をブローカーが比較して販売するので、販売手数料が低く抑えられている」とある税理士は言う。
片や、日本の生命保険会社の場合は、「保険の募集人に支払う手数料が高いので運用効率がすこぶる悪い」(同)という。
海外の生命保険は運用商品という側面が強く、日本の生命保険は保障がメインのため販売に手間がかかるという違いがあるにせよ、販売手数料の多寡は運用する上でリターンに大きな違いをもたらすというわけだ。
また、海外で加入した生命保険であっても、死亡保険金は相続税として課税されるため、相続人1人当たり500万円の非課税枠を利用できる点も見逃せない。
これらの理由から海外の生命保険の人気は高いが、事はそう単純ではない。法律の壁があるのに加え怪しいブローカーの存在など、海外の生命保険に加入するには問題が多いのだ。次ページ以降で詳述していこう。