海外の節税#14Photo:EXTREME-PHOTOGRAPHER/gettyimages

富裕層しか知らないプライベートバンクの素顔とは?海外赴任中に買っておくべきだと駐在員の間で話題のあの節税商品とは?『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の#14では、富裕層座談会の最終回をお届けしよう。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

座談会参加者プロフ(仮名)
 長谷川忠宣 日本人資産家、マレーシア在住
 佐嶋一平 税理士
 沢田信次 税理士、シンガポールでの営業経験あり
 大滝五郎 富裕層の資産運用業務に従事
 舟形義彦 元外資系プライベートバンク勤務

「プライベートバンクはどこでやっても変わんない
浮かれ具合が違うだけ」

――今回で最終回の座談会ですが、日本ではあまり知られていない世界の富裕層事情のいろいろについてお話しいただけますでしょうか。まずは、(※1)アルケゴス事件でも話題になりましたファミリーオフィスから。

長谷川 古いファミリーオフィスで営業らしい営業をしているところは、「信託会社をつくって運用しませんか」とか、「ヘッジファンドの商品を一口買っておきませんか?」などゆっくりの投資スタンスで、こちらにあまり手間の掛からない営業が多い印象があります。アルケゴスみたいなファミリーオフィスは僕の個人的な印象だと仕手集団とか仕掛け屋さんみたいなイメージがありますね。

沢田 シンガポールにはファミリーオフィス向けの優遇税制があります。ビークル(資産と投資家を結ぶ機能を担う組織体)が非課税で運用ができる、ということで誘致してる。でもお金をシンガポールに入れてね、ってやつ。

――プライベートバンク(PB)についてはいかがですか?

長谷川 一任勘定でぐるぐるしようとしている会社(銀行)と、アグレッシブに投資しようとしているところと、両方ありますよね。上場系の投資銀行は客が動かないともうからないシステムになっていて。他の海外の銀行が発行した仕組み債や金融商品に数十パーセント乗せて販売したりしますね。

 しかし、いくら抜かれても、リーマンショック、ギリシャショック、ブレグジットなどのいろんな金融危機のときに、その場その場でショートポジションをつくれる(信用枠の空売りができる)よね。ああいう大きな経済危機のときに、市場の下降局面で空売りなどをするヘッジファンドと急いで取引を始めるのではなく、PBなどを利用してショートポジションを構築するのは有効ですよ。まあ、見えない手数料は結構抜かれますけど、経済危機が長く続く場合とかは便利です。僕はブレグジットではそれを使って浅い傷で助かったかな。

――今PBのトレンドはありますか?

長谷川 やっぱりスイスかシンガポールですかね。預ける国の金融の法律がしっかりしてないと厳しい。スイスとシンガポールは、共に法律が客の方を向いていますね。その他の国の法律は国や銀行の方を向いているような気がします。米国も最終的にはよく資産凍結がありますよね。また金融資産税の議論が今後、日本を含む各先進国で出始める可能性があると思います。

大滝 シンガポールだったら(※2)DBS、HSBC、(※3)UOBが日本人にはいいらしいですが、やってることは日本と変わってない。通貨の種類とかがたくさんあるのと、PB側の利益の乗っかり具合がちょっとだけ少ないくらいです。僕は「PBはどこでやっても変わんねえよ」というのは強調しておきたいですね。浮かれ具合が違うだけ。

――PB、一般人にはあまり身近でないだけに、富裕層だけが利用できるスゴイサービスがあるようなイメージを持っているのですが……。そうじゃない?では、海外の節税商品を購入したいときはどうすればいいのでしょうか?