「転職は悪」という風潮に一石を投じ、日本人の働き方を変えた北野唯我氏の著書、『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』。マンガ版では「自分にはキャリアの武器が何もない」と思っている主人公の奈美(もうすぐ30歳)が悩みながら、自分のキャリアを見つけ出していく。「やりたいことがなければダメ」「S級人材以外は有利な転職は無理」など転職の常識が次々と覆される。今回は、本書の原稿から一部を抜粋して紹介する。

転職で「給料が下がる会社」に行くべきか? 迷ったときに従うべき大切な基準

迷ったときは「未来のマーケットバリュー」を取る

 転職を考えるとき、会社選びで悩むこともあるでしょう。
 ・給料が十分に高く、成熟している会社
 ・今の給料は低いけれど、この先の自分のマーケットバリューを高められる会社
 このどちらかを選ぶとしたら、どちらでしょうか。

 安定している会社の高い給料は魅力です。けれども、たとえ一時的に給料が下がったとしても、未来のマーケットバリューを最優先に考えてほしいです。
 マーケットバリューと給料というのは、時間差で一致するものです。自分の価値を高める働き方をしていれば、トータルの生涯賃金は必ず上がります。
 逆に言えば、会社に言われるままにジョブローテーションで異動を繰り返し、その会社でしか働けない人になるのは、人生全体を考えた場合、リスクとなります。転職市場で勝負できない人、今の自分のマーケットバリューよりも給料をもらいすぎている人は、どこかのタイミングで肩叩き、あるいは減給されます。そして、そのタイミングが40代後半など、やり直しが難しい局面であるかもしれません。

 今後の転職市場では、マーケットバリューを高めた人がさらに評価されます。
 いわゆる大企業、これまで新卒ばかり採用していたような会社が、中途採用を加速させています。たとえば、トヨタ自動車では、年間の入社人数に占める中途採用の割合を現状の約3割から、段階的に約5割まで引き上げることを発表しています。「その道のプロ」を採用することで、組織に刺激を与える効果があると見込んでいるそうです。

 かつては、大企業からベンチャー企業への転職はあっても、ベンチャー企業から大企業へ転職することが一般的ではありませんでした。転職しようとすれば、「大きな会社にいるのに、辞めてベンチャーなんてもったいない」と言われた時代です。
 今はその逆で、ベンチャー企業出身で大企業に転職して活躍している事例が多数あります。大企業の新規事業における中心人物や、業績アップの鍵となっているのが、そうした中途採用の人材であることもめずらしくありません。
 マーケットバリューを高めれば、働く業界も、働く場所も自由に選べる時代がきています。迷ったときこそ、チャンスです。

(※この記事は、『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』からの抜粋です。)