人権問題も政府頼みでは進まない!若者が創る社会に変えていく

 若い世代の人たちに訴えたいことがある。今回ネット上の批判という形で示したものは、「世界標準の人権感覚」である。それを、さらに前進させてほしいのだ。

 これまで日本は、人権問題が起こって批判をされると、対症療法的にあらためることを繰り返してきた。今回、五輪クリエイターが次々と辞めたことも同じである。だが、それだけでは不十分なのだ。

 本質的には、日本は人権問題が存在しないという状態を目指さなければならない。まずは、日本が世界から人権感覚が低いと批判され続けてきた以下のような問題を一挙に解決することが重要だ(第219回・p5)。それを、若者から次の7つを政府に強く求めてはどうだろうか。

(1)数々の企業の上級・中級幹部における女性の割合が、わずか14.7%であることの改善(World Economic Forum, Global Gender Gap Report
(2)「下院議員または一院制議会における女性議員の比率、193カ国のランキング」で、日本が166位であることの改善(Women in Politics:2021
(3)国連の女子差別撤廃委員会から「差別的な規定」と3度にわたって勧告を受けている夫婦同姓をあらためて、「選択的夫婦別姓」の導入
(4)「女子差別撤廃条約」の徹底的な順守を宣言
(5)国連の自由権規約委員会や子どもの権利委員会から法改正の勧告を繰り返し受けている婚外子の相続分差別の撤廃(第144回
(6)外国人技能実習生の人権侵害問題の解決などによる、多様性のある日本社会の実現(第197回
(7)同性婚などLGBTの権利を保障する

 また、政府以外にもこれらの問題に深く関わる、企業、団体、個人にも働きかけていく。人権問題を個別にただしていくだけではなく、一挙に「人権を世界で最も守る国」に日本を変えて、政策を作っていく。それが、可能な時代だ。

 世界では「ビジョンハッカー」と呼ばれる若者たちが、スマートフォンを武器に仲間や資金を集め、社会システムを根本から変えようとする動きが広がっている(NHKスペシャル)。

 例えば、「ブラジルのスラム街の貧困を自らの力で解決できるシステム」「日本の健康診断のシステムを途上国に導入して世界の医療格差をなくす」などのビジョンをSNSで発信し、世界中で仲間や資金を得て実現しているのだという。

ドタバタ五輪開会式、日本に「多様性と調和」がないという気づきと希望本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されています。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 これからは、社会を変える政策の立案は政治の専売特許ではない。調整に手間取り、既得権の壁に阻まれて時間ばかり浪費する政治よりも、若者同士がつながり、より軽やかに壁を乗り越えて、新しい社会を創る時代になっていく。

 日本の人権問題も政府頼みでは進まない。NGOのスタッフ、法律、金融、コンサル、研究者などさまざまな専門を持つ若者たちが、SNSをネットワーク化してビジョンを作り、問題を乗り越える新しい政策を創っていくべきだ。

 東京五輪では、これまで日本をけん引してきた選手が敗れる一方で、新しいスター選手も台頭してきている。新しい日本が始まる大会となりそうだ。それは、スポーツ界にとどまらず、日本全体に広がっていく流れとなることを希望する。