最新版の「鉄道の混雑率」に関する調査結果(国土交通省)を基に、独自にランキングを作成した。この記事では、混雑率ランキング【東海版】と“痛勤”ラッシュ事情を解説していく。また、ランキング外だったものの、筆者が注目する混雑路線を紹介する。たった2駅・3分の延伸を行っただけで、沿線の価値が劇的に上がった九州の路線とは?(乗り物ライター 宮武和多哉)
名鉄の路線がトップ5を独占
地下鉄東山線とJR中央線の“痛勤”リスク上昇
東海圏の鉄道路線の混雑率ランキングは、名古屋鉄道(以下:名鉄)の本線(東と西)・常滑線・犬山線・瀬戸線がトップ5を独占する結果となった。直接つながっていない瀬戸線を除くと、各路線とも名鉄名古屋駅の手前側が軒並み最混雑区間となっており、一極集中が激しい構造だ。
続いて6位に入った名古屋市営地下鉄の東山線では、名古屋の都心部を貫く同線の輸送人員がコロナ禍の9割程度まで回復したことで、混雑率は134%を記録した。
東山線は栄や名駅といった都心部を通るので、名古屋の地下鉄5路線では最も利用者が多く、「営業係数67.1」(100円を稼ぐのに67.1円の経費しかかからない)の黒字路線だ。しかし、1957年開業という歴史が古い路線でもあり、トンネルや車両断面が小さいことから、車両1編成の定員は約600名(東京都内の地下鉄の半分以下)にとどまり、車内空間はお世辞にも快適ではない。
こういった事情は、車両定員の少なさが混雑につながっている東京メトロ日比谷線と同様だが、東山線は日比谷線以上に、そもそもの輸送力が足りていない。
一方で、東山線に接続する愛知高速交通(リニモ)は、順調にコロナ禍前の利用水準に戻している。東山線の利用状況がリニモと同様に回復していくと、またすぐに混雑率が上昇し、“痛勤”ラッシュにつながるリスクがある。
この他に注目したいのは、8位のJR中央線だ。新守山→大曽根区間の混雑率が、前年度から12%も上昇し、124%となった。コロナ禍前を上回る混雑率を記録した原因は、最大10両編成だった列車を8両編成化した22年度から輸送量がダウン(1.8万人→1.68万人)した一方、乗客は前年度比で約2000人プラスの2万765人まで上昇したことにある。