「男性は死ぬまで『かっこいい』と褒められたいし、社会的に評価されたい生き物。そのため多くの男性は時代に即した“かっこいいロールモデル”に自分を当てはめようとします。80年代まではガツンと言って女性を従わせる無頼漢的な亭主関白が“かっこいい”とされていました。しかし、現代ではそのような男性は誰からもリスペクトされず、むしろ若い世代からは嘲笑の的にもなりかねません。今の“かっこいいロールモデル”は自己管理ができて、男女分け隔てなく優しく接し、相手の話を聞いて理解し、ソリューションを見つけられる男性です」

 大ヒットアニメ『鬼滅の刃』の主人公、竈門炭治郎はジャンプ史上類を見ない優しい男であり、お笑い界でも「人を傷つけない笑い」という惹句で第7世代と称される若手芸人が活躍中。堂々と浮気発言をする大物芸能人も今では少なくなった。このような時代の空気を男性陣は読み取っているのだろう。

「子どもたちにとっても『お父さんがお母さんを従わせる』なんて、とんでもない話。炭治郎のような『相手の話を聞き、フラットな目線で相手と関係を結ぶ男子』こそが“かっこいいロールモデル”ですから、昭和的な亭主関白は家庭内での地位も低くなります。また、時代の空気に敏感な男性であればあるほど、『夫婦仲が良くて妻に理解がある夫のほうが周囲の評価は高まる』という“計算”がある。つまり、決して男女同権的な理想を追求したいがゆえに妻に歩み寄る男性ばかりではないと思います」

 評価されたいという下心と打算があって、妻関連コンテンツを読むパターンも多いのだろう。

女性への理解を深めても
行動に移せない人は多い

 ただし、離婚した男性への取材を多くこなす稲田氏に言わせると「女性の気持ちを理解しても、その後に実行できるかは別問題」だという。

「ネットなどの発達で、女性の思考回路についての理解は深まったと思いますが、実際の生活で行動に移している男性は決して多くありません。離婚男性の事例にも、理解はすれども実行できなかったというものが山ほどあります。『妻のトリセツ』などで書かれている女性の考え方は、昭和的な男性脳にはないOSなので、特に40代以降の男性はOSごと書き換えなければ対応できません。ただ、これは異性関係の構築を学ぶ機会が社会に用意されていない日本ならではの問題という気がします」