夏を境に日本経済は
コロナと共生する「アフターコロナ」へ

 さて最後にもう一つ、事実関係はさておいて興味深いグラフをご覧いただきたいと思います。インドの感染状況です。

メダルとコロナの「Wラッシュ」で、日本に起こる3つのこと図4 インドの週ごとの感染者数と死者数(WHOデータを基に、筆者作成)

 インドはアメリカに次ぐ世界2位の感染者数を記録した国です。しかもアメリカとは異なり全人口に行きわたるワクチンの量が確保できず、大半の国民はワクチンも治療薬もないまま新型コロナのパンデミックを迎えました。

 一時は死者の埋葬も間に合わないというほどの被害だったインドですが、5月に入り、感染者数が急速に減少していることがグラフから分かります。

 この原因については、あくまで医学的な事実は分からないと申し上げておきます。しかしNHK BSのドキュメンタリーで興味深い現地報道をしていましたので紹介したいと思います。要するにワクチンが手に入らないインドの国民は、代わりに薬局で安価に手に入るイベルメクチンを飲んで自衛を始めたというのです。

 イベルメクチンはノーベル賞を受賞した大村智博士が開発に関わった抗寄生虫薬です。用途がまったく違う治療薬なのですが、新型コロナが出現した当時、既存の薬の中で新型コロナに対抗できる薬がないか広く探された中で、イベルメクチンに治療薬としての効果があるのではないかと注目されました。

 そこで、陰謀論的に興味深いことが起きています。アフリカやアジアなどワクチンが入手できない国で自衛的にイベルメクチンを飲む人が増えた一方で、世界保健機関(WHO)、米食品医薬品局(FDA)、米感染症学会のいずれもがイベルメクチンをコロナに適用しないように勧告したのです。

 そもそもイベルメクチンは多くの国々で処方箋なしに購入できる、いいかえると副作用のリスクが非常に少ない薬です。それでもそれらの機関では危険性を広く注意喚起して、先進国ではこれから治験をした後でその有効性を確認しようという態度をとっています。

 状況を勘繰れば、特許の切れた市販薬がコロナに効くとなるとビジネスモデル的に困るひとたちが一定数いて、それらのひとたちの政治力がかなり大きいようだというようにも見える政治的な展開です。

 公的機関は「世界各国でイベルメクチンを飲んだことでコロナから回復した人がたくさんいる」という事実は「治験による信頼性とは異なる」と意見表明しています。医学研究者の立場としてはそうなのでしょう。ただ経済学的には、これら貧しい国々を中心にイベルメクチンの需要はこの先、急拡大すると思います。

 医学で権威のある人たちが認めなくても、統計学の観点で図4を見ればイベルメクチンとインドのコロナ収束に「相関傾向がない」と考える人は少数派のはずです。そして多くの製薬会社にとって残念なことなのかもしれませんが、イベルメクチンは実質的に新型コロナ治療薬として、それらの国々に広まっていくはずです。

 結局、これらの事実を見ていると最後の予測、「結果として日本経済はこの夏を境にアフターコロナに向かうだろう」という希望が見えてきます。

 ワクチン接種は、ワクチンが思ったほど届かないという問題を抱えつつも、高齢者中心にワクチンがいきわたるところまでは到達できました。状況はこのあと、さらに良くなるでしょう。

 新型コロナのもうひとつの問題である「治療薬がない」という問題も、科学者の努力か経済原理かどちらが原動力になるかは分かりませんが、それほど先ではない時期に解決されることでしょう。

 繰り返しになりますが、予測としては東京のコロナ感染者数はこの夏、急増すると予想されます。しかしそのコロナがおよぼす意味が、この夏を境に変わる。そして世界経済はコロナにおびえてこもる段階を過ぎて、コロナと共生しながら前に進む時期へと変化するだろうと私は予測しています。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

訂正 記事初出時より以下の通り表記を改めました。
40段落目:新型コロナは2022年1月末まで指定感染症にされています→新型コロナは新型インフルエンザ等感染症に指定されています
41段落目:法定の指定感染症であるがゆえに→法定の感染症であるがゆえに
41段落目:治療現場では防護服の着用など医療関係者の負担が高くなっています→治療現場では医療関係者の負担が高くなっています
41段落目:この指定の見直しを早めたほうがいいかもしれません→この対応の見直しを早めたほうがいいかもしれません
(2021年7月30日14:41 ダイヤモンド編集部)