ベストエフォート型とギャランティ型の違い

 それにしても、なぜ、テスラとスペースXはこれほどまでの大成功を短期間で成し遂げることができたのか。その鍵は、「ベスト・エフォート型」にあった。

 まずは、ベスト・エフォート型の対極にあるギャランティ型から説明しよう。

 テレビや自動車といったハードウエア製品の世界では、「ギャランティ型」という手法で品質や性能の保証をしてきた。これはあらゆる状況を最大限想定し、性能テストを繰り返し、時間とコストをかけることで不良品が出ないように万全を期す方法だ。

 ただし、ギャランティ型を採用すると、不良品だけでなく失敗も“悪”だと拒絶する企業風土になってしまう。その結果、失敗した社員は給料が減り、出世が遠のいた。

 一方、シリコンバレーを中心としたソフトウエア製品の世界では、プログラムのバグはあって当たり前。不具合が起きることも織り込んで、結果を保証しない「ベストエフォート型」という手法で成長してきた。

 例えば、PCがフリーズしたら、電源を切ってもう一度立ち上げればいい。インターネット回線は絶対につながることを保証してはいないし、ソフトウエアの動作が途中でおかしくなれば、アンインストールしてインストールし直せばいい。

「とりあえずやってみる。問題が起きれば修正する」

 これはアメリカ人の気質にマッチしていた。

 さて、ギャランティ型は時間もコストもかかるが、万が一の問題が起きる確率は大きく下げられる。従って、社長がマスコミの批判にさらされる回数も減る。その一方で、革新的なテクノロジーが誕生する可能性ははなはだ低くなる。

 かたや、最短コースを軽装備で駆け抜けるようなベスト・エフォート型は、導入が格段にスピーディで、コストも大幅に低減できる。“失敗”を容認するので、革命的なテクノロジーが生まれやすくなる。

 だが、万が一の問題が起きる確率は極めて高くなり、その結果、社長が批判にさらされる回数はひときわ多くなる。さらに、会社業績は乱高下しやすく、事業継続性は低くなる。

 企業の安定を求めるなら、ベスト・エフォート型は禁断の手法だった。