金融ビジネスは今や、商社の重要な収益源の一つだ。リース子会社を舞台に繰り広げられる三菱商事と三菱UFJ銀行の主導権争いの行方や、新興の金融事業者に出資を続ける伊藤忠商事の狙いなど、特集『商社 非常事態宣言』(全15回)の#13では、商社が金融領域に侵攻するさまを明らかにする。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
リース子会社を舞台に主導権争い
三菱「御三家」の銀行と商事の思惑
「ひとまず、あれで落ち着いたんだ」。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の幹部は、安堵とも心配とも取れる言い方で、ある会社の現状を口にする。
三菱HCキャピタル――。2021年4月に、三菱UFJリース(MUL)と日立キャピタルが合併し誕生したリース会社だ。同社の21年3月期決算は、単純合算値の純利益が873億円となり、業界最大手で1924億円のオリックスに次ぐ第2位に位置する。
このリース会社について、同幹部が「落ち着いた」と語るのは、無事に合併が完了したことだけが念頭にあるわけではない。新体制を迎えるに当たり、株主である三菱UFJFGと三菱商事の間で主導権争いが勃発し、それが「ひとまず」膠着状態でとどまっていることが背景にある。