「予測」が可能なサブスク型メディア

 ではこうしたジレンマを抱えてなお、サブスク型メディアを成功させるには何が必要なのでしょうか?

 野球の比喩を重ねるならば、毎回ヒットを積み上げる、ノーヒットのイニングを作らないということが重要と言えます。1つの記事で大量の有料会員を獲得することが困難ということは、1つの記事が振るわなかった場合のロスを取り戻すのに多大な努力が必要ということです。言い換えれば、なるべく1記事あたりのパフォーマンスを「平均」に近づける努力が重要となります。

 一方で、PV型メディアではごく一部の上位記事にPVが集まるいわゆる「べき乗」の分布をしており、平均値が役に立ちません。10万PVを稼ぐ記事がある一方で、メディア全体の平均PVは1万程度、ということも珍しくないはずです。

「ホームラン」をなるべく連発したいPV型メディアと「平均」を目指すサブスク型メディア。この2つで最も異なるのが、「予測」に対する考え方です。

 PV型メディアでは、PVを大量に稼ぐ記事は「平均」の外にある「上振れ」であり、短いスパン(例えば月間)の中で、どれだけそうした記事を生み出せるかは、予測困難です。

 一方で、サブスク型メディアは、先述のとおり記事による会員獲得がPV型ほど平均から乖離していないので、過去の平均値を使って会員獲得の予測モデルを作ることができます。

 以下がそのイメージ図です。

 予測モデルのシンプルな例としては、有料会員向け記事本数×想定UU×CVRがあります。

 記事本数は書き手のリソースに依存するため急激には変化しませんし(ある日突然編集部の人数が倍になるということはないでしょう)、新規会員獲得率(=新規会員獲得数/記事UU、以下「CVR」)もPVよりは平均値に収束しがちな指標です。UUは、このモデルの中では最もブレが激しい変数ですが、「お金を払ってでも記事を読みたい」というニーズを持つユーザーはある程度限られており、あまりUUは上下しないことが多いです(裏を返せば、読み手を具体的にイメージしない記事だとUUの予測が難しくなります)。

 重要なことは、こうした予測モデルを作ることそのものではなく、事後の振り返りにあります。