そうした体験が減ってきているのには、世の中全体としてコンプライアンスが厳しくなっていることも関わっていると思います。「あれをやってはダメ、これをやってはダメ」という意識が子どもにも伝わるんですよね。だから小さな子も規範意識が強いそうです。

小川 規範意識が強いと、「なんでもやってみよう」というわけにはいかなそう……。いまは公園でも、ボール遊びはダメだったり危ないことは禁止されていたりすることが多いです。

その2:「環境」を整えてあげる

加藤 コンプライアンスはもちろん大事ですが、社会からおおらかさが失われていることが、子どもたちの自由を奪っているとも言えます。エジソンのように尖った才能のある子が生きづらくなっているとしたら、よくないなと思います。お友だちにミミズドリンクを飲ませるのはさすがにマズイけど(笑)。

小川 「鳥が空を飛んでいるのはミミズを食べているからだ」と考えたエジソンは、ミミズをすりつぶして近所の女の子に飲ませたんですよね。「空飛ぶ薬だよ」って言って。

 これはさすがに、叱られました。ほかにも、納屋に火をつけたらどうなるかを知りたくて実験して、めちゃくちゃ叱られています。これもマズイ。

 でも、本当にやばいこと以外については、お母さんはおおらかで、実験の本を買ってあげたり実験室をつくってあげたり、環境を整えてあげています

 そして、口出ししない。こういった環境づくりが素晴らしかったのだろうなと思います。

『オタク偉人伝』を読んでくれた小学生の感想で、「エジソンみたいな環境にしてもらえたら嬉しい」というのがありました。自分で試したいことを試せる環境ということですよね。

加藤 面白いですね。科学者でありメディアアーティストの落合陽一さんは、3歳のころに家の電話4台をすべて分解したそうです。落合さんが尊敬する偉人は、エジソンだとか。

小川 それはすごい。エジソンと落合陽一さん、なんとなくイメージが重なります。

加藤 親はつい「危ないからやめておきなさい」「役に立たないから、もっと別のことをしなさい」みたいなことを言ってしまいがちですが、子どもにとってはそういったプロセスが大事なんだなとあらためて思います。

小川 結果よりも過程が学びになるんですよね。

その3:「失敗」をプラスに変える言葉がけ

小川 エジソンのエピソードは、私自身も支えになっています。失敗しても、落ち込まないじゃないですか。「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」というすごいポジティブな名言を残しています。エジソンが失敗しても、お母さんが試行錯誤をほめる言葉がけをしてあげていたのが大きいと思います。

加藤 発達心理学者のキャロル・S・ドゥエック教授は、失敗を「改善の機会」ととらえられる人は、失敗しても粘り強く挑戦を続けられると言っています。

小川 失敗したときに「自分はダメなんだ」と思うか、「よし、次にいってみよう」と思えるかは大きな違いですよね。

加藤 失敗したとき、まわりがどういう反応をしてきたかというのが大きく影響しそうです。英語では、生徒の発言が間違っているとき、先生がかけてくれる「Good try!」という言葉があります。チャレンジしたことを褒める。いい言葉だなと思います。

小川 結果がどうあれ、チャレンジしたことを褒めるっていいですね。
>>対談次回「「ジョブズの先生」がしていた、才能を伸ばす1つの習慣」に続く