では、実際に公的年金の実質的運用利回りはどれぐらいになっているのだろうか。2001年~2021年6月末までの20年間の収益率は年率で3.7%となっている。その結果、累積収益額は100兆3182億円をあげている。すなわちこの20年間で年金の積立金は倍以上になっているのだ。マスメディアの報道では期間収益がマイナスになった時だけ大きく取り上げられるし野党も騒ぐが、年金運用というものは1年や2年の実績で評価しても全く意味はない。

 この1年ぐらいの間の運用利回りは好調だったが、それは単にマーケットが良かっただけだし、逆に今後マーケットが下落すれば、それは年金積立金の運用利回りにはマイナスになる。これはインデックス運用なのだから当然である。したがって、短期的な運用成果の善し悪しを取り上げても意味はないのだ。

確定拠出年金の運用状況
損をしている人も?

 一方、同じ年金という名前が付いているが、企業年金のひとつである「確定拠出年金」の運用利回りはどうだろうか。これは確定給付企業年金のように会社がまとめて年金資産を運用するわけではなく、加入者が自分の資産を自分で運用するわけなので、1人1人全く運用成績は異なる。

 そこで、企業年金連合会が2021年2月26日に発表した「確定拠出年金実態調査結果」によると、2020年3月末時点での加入者の通算運用利回りは平均すると年率0.6%となっている。国の年金積立金の運用利回りをはるかに下回る成績である。もちろんこれを一概にGPIFの運用と比較してみても意味はないが、それにしてもこの違いはあまりにも大き過ぎる。

 ひとつ考えておかなければいけないのはこのデータが2020年3月末となっていることから、当時コロナ禍によるマーケットの一時的な下落の影響が大きかったということだ。しかしながら同じ調査結果において加入者の資産残高を見ると、定期預金などの元本確保型商品が52.7%と半分を上回っている。ほとんど金利がゼロに近い預金のみで運用すれば増えるわけがない。

 もちろん、確定拠出年金の運用は自分で許容できるリスクの範囲内で行えばいいわけだから、全額定期預金で運用しても、自分で納得の上であれば何も問題は無い。とはいえ、多くの企業においては、それまでにあった退職一時金や確定給付型の企業年金から確定拠出年金に制度が移行されている。その場合に重要になってくるのが「想定利回り」である。

「想定利回り」というのは、「この利回りで加入者が運用することができれば制度移行前の退職給付の金額と同額になる」という意味である。前述の企業年金連合会の調査結果によれば、その「想定利回り」の平均は1.99%となっている。つまり加入者は最低でも1.99%以上の利回りを長期的に実現しないと自分の退職金が減ってしまうということになる。だとすれば定期預金に放っておいてしまうと後々問題になってくる。