ITゼネコンの巣窟 デジタル庁_番外編Photo by Hirobumi Senbongi

連載『ITゼネコンの巣窟 デジタル庁』の番外編では、ワクチン担当大臣補佐官として新型コロナウイルスのワクチン接種状況を記録するシステムの開発を担当するなど、政府のIT投資に詳しい小林史明衆議院議員にデジタル庁の課題を聞いた。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

デジタル庁に必要な能力は
情報収集力、度胸、ITスキル

――小林史明議員は2020年まで自民党デジタル社会推進本部事務総長としてデジタル庁設立に向けた提言をまとめるなど、政府のIT投資の問題に精通していると思います。政府が発注した「コロナ対策のためのITシステム」は、国民に給付金すら満足に配れずに失敗に終わり、「コロナ対策アプリ」もワークしませんでした。なぜ失敗したのでしょうか。

 第一の問題は、システムの目的が明確になっておらず、それが曖昧なまま開発をスタートしてしまうことです。システム開発自体が目的になってしまっています。

 次に、システム化する業務を効率化しないままで突っ込んでしまうのが重大な問題で、これが、デジタル庁がクリアすべき大きな課題になります。行政業務の現場を預かっている霞が関の省庁と一緒に仕事の仕方を見直して、業務の効率化を図った上でシステム化する。これは、相当に上流工程から開発に参加していかないとできません。

――ワクチン接種記録システム(VRS)開発で苦労したことは何ですか。また、デジタル庁が「行政のデジタル化」を進める上で、教訓になったのはどんなことですか。

 VRSの開発に取り掛かったときには、ワクチン接種を受ける国民に配布される接種券のフォーマットなどが既に決まってしまっていました。

 そのため、業務には情報を手入力しなければならないとか、入力フォーマットがばらばらだとか、不都合な問題が山積していて、それをどう(後から作る)システムでカバーするかが問題でした。カバーしきれないところもあって、そこはつらい点でした。