デジタル庁を所管する“初代デジタル相”に就任する予定の平井卓也デジタル改革担当相は、コロナ禍で露呈した日本のIT政策の失敗を「デジタル敗戦」と呼ぶ。政府が2001年にデジタル化を打ち出した「e-Japan戦略」を掲げてから20年超。いまだIT後進国を抜け出せない敗因をどう見ているのか。官僚との定例会議における“NEC排除発言”の真意はどこにあったのか。特集『ITゼネコンの巣窟 デジタル庁』(全7回)の#3では、平井氏を直撃した。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
「デジタル敗戦」に至った理由を
“初代デジタル相”が切り込む
――デジタル庁が目指す政府のデジタル化は2001年の「e-Japan戦略」の策定から20年来の課題です。しかしコロナ禍では行政システムの不具合が露呈して、大臣本人が「デジタル敗戦」と呼びました。どこに敗因があったのでしょうか。
今まで多くの政権で「世界最先端のIT国家」など、いろいろなITのテーマを掲げてきましたが、国民の期待はあまり高くなかった。だから勇ましい計画やスローガンを掲げて、それが実現できなくても誰もとがめられなかったし、責任も問われなかった。それが過去20年の現実だったと思います。
デジタルで生活が変わるということを国民が実感していなかったこともあるし、国と地方のシステムがUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザー体験)の発想で作られていなかった。公務員や自治体の職員の使いやすさが優先され、申請する側の国民が便利になることはあまり重視されてこなかった。
これまでも、IT担当相に相当する大臣は過去20年間ずっといたのですが、無任所大臣(省庁などの行政機関を管掌しない大臣)の立場です。そして12年から政府CIO(内閣情報通信政策監)がいますが、強い権限もない。だから(IT担当相や政府CIOが)「こうしてほしい」と各省庁にお願いしても限界がありました。
――それに対して、政府のデジタル戦略に強大な権限を持つデジタル庁が発足することで、何が変わりますか。