国民が気にすべきは
方向性の変容と、権限の拡大

 あとは国民として気にすべきことは、方向性の変容と、権限の拡大です。行政手続きの連携や簡素化は、各省庁の官僚からの大きな抵抗が予想される領域です。「5年で一気呵成に」という方向が「10年かけてまずはできるところから」みたいな形で方向性が変容することは容易に予想されます。そうならないように、国民が政治を監視する必要があると思います。

 一方で官僚は、必ず権限拡大を求めます。重点計画が進まない状況であればなおさら、それ以外に重点を広げて、役所としてのデジタル庁の権限を拡大しようと動きます。たとえばIT企業の育成や、次世代のIT技術への投資といった形で新たな予算と権限を確保するような動きは必ず見られるようになるはずです。

 これまでも官民ファンドがいろいろと作られましたが、その多くが赤字に陥ったゾンビ企業の延命に使われてきた過去があります。デジタル業界の振興という目的ではすでに経済産業省や総務省が多くの政策を打ち出し、遂行している状況下でもあります。デジタル庁については手を広げず、重点計画をなんとしても完遂する。そう動いてくれれば、日本のデジタルの未来はきっとよくなると私は思います。

 ということで、いろいろと心配はありますが、9月1日のデジタル庁の発足が日本を良い方向へと変える一つのきっかけになることを、国民として期待したいと思います。