階級社会#11

2019年4月から施行された働き方改革関連法とは、八つの労働法の改正を伴う総称だ。ただでさえ、改正労働法の解釈が難しくなっていたところに、コロナショックが直撃。人々の働き方が激変し、労働問題はより複雑化する傾向にある。そこで労働法に詳しい向井蘭弁護士に、現場で起きがちな労働トラブルの解消法について3回にわたり徹底解説してもらった。企業の経営者・人事部にとって、必見の最強マニュアルとなること間違いなしだ。特集『新・階級社会 上級国民と中流貧民』の#10はその第3回、退職代行や副業など、新たな労働環境で起きがちな問題への対処法などについて。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

退職代行ブームで企業も困惑
若年層の働き方意識が急変

 リモートワークの普及などコロナ禍によって働き方は様変わりしたが、それ以前から旧来の日本型雇用から脱する萌芽や雇用の新潮流が見え始めていた。

 その象徴が、退職代行ブームだ。退職代行サービスを手掛けるニコイチによれば、相談者は、20~30代の若手が多いという。この年代は、職場で問題があった場合は労働組合に頼るよりも、スパッと辞めたいと考える人が多いのだろう。ニコイチは退職代行ビジネスだけで年間2億円を売り上げるといい、若年層を中心に退職代行はもはや当たり前の選択肢になっているようだ。

 それだけではない。近年、パラレルキャリアの重要性がうたわれて、副業が浸透しつつあるが、企業にとっては本業をおろそかにされかねないという悩みがある。また、働き方改革関連法によって実現した「同一労働同一賃金」などでは、非正規雇用の待遇などについてこれまで以上に慎重な対応が重要になってくる。

 向井蘭弁護士に聞く労働問題Q&Aの第3回では、こうした新たな働き方の登場によって複雑化する労働問題の疑問について尋ねた。

質問1:退職代行業者から突然退職の連絡が来ているが、何とか退職を思いとどまらせられないか。

質問2:副業制度を特に就業規則に定めていないが、副業によって本業のパフォーマンスが下がっている社員にどう対応すればいいか。

質問3:「同一労働同一賃金」が定められたが、60歳以降の定年後再雇用では年収をどれくらいまでなら下げても問題ないのか。

質問4:リモートワークでコミュニケーションが希薄になり、メンタルに問題を抱える社員が増えた。対策は。

質問5:リモートワーク手当は支払うべきか。

 これらの疑問への回答とは。