階級社会#2Photo:SOPA Images/gettyimages

ホンダといえば、給料や福利厚生などの待遇に恵まれた“社員に優しい”会社として知られている。そのホンダが、本気のリストラに着手。今年4月に募集をかけた「早期退職プログラム」には国内正社員の5%に相当する2000人もの社員が殺到した。特集『新・階級社会 上流国民と中流貧民』の#2では、割増退職金の詳細条件などプログラムの全容を明らかにすると共に、それと並行して進む“シニア追い出し”施策の実態に迫った。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)

50歳以上の社員4割の超高齢化
希望退職に続くシニア追い出し策

「日本のホンダ社員に占める、50歳以上の社員の構成比が4割に上る。円滑に社員の世代交代を進めるために導入する」

 これは、早期退職制度「ライフシフト・プログラム(LSP)」を導入するに当たって、ホンダ経営陣が管理職社員に向けて発信したメッセージだ。

 今年4月に、ホンダは中高年社員を対象にLSPを実施。LSPは、定年より早期に辞めれば、通常の退職金に上乗せした割増退職金が加算される制度だ。早期退職対象者のうち希望する社員には、人材サービス企業による再就職支援など、転職に必要なメニューが用意されている。

 ホンダは「募集人数や期限を定めているわけではなくクビ切りではない。あくまでも転身支援制度であり、早期退職制度という位置付けではない」という立場だ。だが、管理職に発信した「冒頭の一言」に経営の意思は凝縮されている。超高齢化まっしぐらのいびつな年齢構成を解消するために、ロートル社員の締め出しを急いでいるのだ。

 制度導入の背景には、企業に高齢者雇用を強いる規制強化の動きもある。今年4月に施行された改正・高年齢者雇用安定法は、企業に対して70歳までの社員の雇用努力を義務付けるというもの。今後、年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、努力義務から「70歳定年、あるいは70歳までの社員の雇用義務付け」へと規制が強化されることが濃厚になっている。

 そうなれば、企業の人件費激増は避けられない。今のうちに中高年・シニア人材をリリースしておかなければという防衛本能が働くのは当然だ。

 そして、10年ぶりに導入されたホンダの早期退職プログラムに対して、社員2000人超もの応募が殺到した。2021年3月期時点で、ホンダの日本地域における正社員は4万3472人(ホンダ本体、本田技術研究所、ホンダ・レーシングなどを含む)なので、全体の4.6%に相当する社員が手を挙げたことになる。

 希望者の大量殺到に対して、中高年のホンダ社員からは複雑な本音が聞こえてくる。

「“老兵は死なず、消え去るのみ”ということだろう。周囲で手を挙げた人間も多く迷ったが、自分は居場所がなくなっても最後まで居続けようと思う」(50代後半ホンダ社員)

「自分たちが対象年齢に達した時には、退職金の原資が枯渇しているのではないか。辞める人に手厚く、現役社員の活力が高まる仕組みになっていない」(40代後半のホンダ社員)

 一体、LSPとはどのような制度なのか。割増退職金の詳細条件などプログラムの全容を明らかにする。また、取材を進めると、LSPとは別の新たな「シニア追い出し施策」の遂行が進められていることが分かった。