今回の規制には
「限定」が設けられている

 そして今回の特定プラスチック使用製品は、レジ袋を差し引いたさらに「残り」の中で規制できそうなものを選んでいるわけなので、個々の品目の削減効果はレジ袋よりもさらに小さくなること自体は否めないでしょう。実際、コンビニでレジ袋をもらう機会と比べたらストローやスプーンをもらう機会のほうがずっと少ないわけですから。

 今回の特定プラスチック製品規制案について、効果以外にもう一つ議論を呼びそうな点が、規制についていくつかの「限定」がある点です。

 まず基本的には対策が義務付けられるのは、これら特定プラ製品の年間使用料が5トン以上の大規模事業者だということです。イオンやセブン-イレブン、マクドナルドやスターバックス、東横インやスーパーホテルなど大手の事業者はこの対象になりそうですが、地元の小さなスーパーや飲食店や旅館などは対象外になりそうです。

 また対策についても有料化以外に、事業者側には、消費者が特定プラ製品を受け取らなかった場合のポイント還元、受け取る意思確認、再利用、代替素材への転換などの選択肢があります。この法律だと、今までと同じオペレーションでも「対策を講じた」と認定される事業者が出てきそうです。

 たとえば宿泊する際に「環境に配慮してアメニティーが不要という方はフロントまでご連絡ください」というプレートが部屋に置かれているホテルを見かけますが、法律的にはそれでも意思確認はクリアしたということになるかもしれません。

 では、今回の法律は効果がないかというと、そうではありません。それは法的に拘束される範囲は狭くても、象徴的に社会全体にメッセージを送ることができるようになるからです。

 これまでも一部のファストフードがストローを紙製に変えたという例はありますが、あくまで“エコに敏感な企業のいい話”的にしかニュースは広まっていませんでした。

 今回は4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行されることで、少なくとも大手企業全体で一斉に、プラスチックフォークから歯ブラシ、使い捨てハンガーに至るまで何らかのアクションを取る必要が出てくるわけです。つまり社会全体に見える動きが一斉に起きます。

 消費者も、それによって考え始めるでしょう。コンビニでスイーツを買ったときにプラスチックのスプーンをもらいますよね。もしこれが1本2円になったら、私は少なくとも自宅で食べるプリンのスプーンはもらわないと思います。ホテルでも出張の際には自分の歯ブラシとひげそりを持ち込むのが習慣なので、たとえ10円で歯ブラシが置いてあったとしても私は使わないと思います。

 そうやって一部の大企業チェーンで特定プラ製品の有料化が始まっただけで、「これからはそういうところまでエコを考えなければいけない時代なんだ」という意識が社会全体に相当広まるはずです。

 逆説的に言えば、全体の2%の効果しかないレジ袋の時でもあれだけエコが話題になったわけですから、こういった生活に密着したところでの12品目が引き起こすさまざまな無料提供の終了は、さらに国民全体に「これからは環境に配慮したライフスタイルをもっと徹底していかなければならないんだ」というメッセージを伝える大きな効果があるはずです。