トヨタが「プリウス」を生み出すも
その後が続かなかった

 8月末の世界全体の株式時価総額ランキングを見ると、1位から3位がアップル、マイクロソフト、グーグル、5位と6位がアマゾン、フェイスブックだ。上位10社には、台湾積体電路製造(TSMC)や中国のテンセントもランクインする。わが国企業ではトヨタ自動車が40位、キーエンスが90位あたりに入る。

 1986年、世界の半導体市場の上位10社のうち6社が日本企業だった。89年の世界トップの時価総額はNTTだった。当時、わが国の半導体、家電製品、通信機器が世界シェアを獲得し、さらなる成長への期待は高かった。

 つまり、89年末までわが国経済は世界を席巻したが、その後の凋落が激しい。同年末に日経平均株価は3万8915.87円の史上最高値をつけた後、90年代に入ると資産バブルが崩壊した。株価と地価の下落によって景気は減速・停滞し、経済全体でバランスシート調整が進み、不良債権問題が深刻化した。その状況下、わが国経済全体で雇用の保護を重視する心理が強くなり、既存分野から成長期待の高いITなどへの生産要素の再配分が難航した。

 その一方で、世界経済では中国、台湾、韓国などの企業が技術力を蓄積した。また、米国では75年に創業したマイクロソフト、76年のアップルに続き、IT革命が加速する中で94年にアマゾン、98年にグーグル、2004年にフェイスブックが誕生し、GAFAMと呼ばれるIT先端企業の筆頭格に成長している。

 1990年代以降、わが国ではトヨタ自動車がハイブリッド自動車の「プリウス」を生み出したが、その後が続かなかった。また、キーエンスは世界経済の変化に合わせてファブレス体制を導入し、さらには実力主義を貫くことによって高い成長を実現した。しかし、わが国の産業全体としては世界各国の主要企業と互角に競争することが難しい状況が続き、時価総額トップ10位に入る企業が見当たらなくなった。