
1980年代の情報通信業界を象徴する用語に、VAN(Value Added Network)とEDI(Electronic Data Interchange)がある。
VANは、企業間でデータをやりとりするための専用ネットワークで、個別に回線を敷く必要がなく、信頼性の高い通信を提供するものだ。EDIは、発注書や納品書などの商取引データを標準フォーマットで電子交換する仕組みで、物流・製造・小売りなどBtoB取引の効率化を大きく押し上げた。
転機となったのは、85年の電気通信事業法施行による「通信の自由化」である。NTTの民営化と民間企業の通信事業参入の解禁によって、VAN市場は一気に膨張。通信網を持つNTT、KDD(現KDDI)にとどまらず、NEC、日立製作所、富士通、日本IBMといった電機メーカー、さらには三菱商事、伊藤忠商事、丸紅など総合商社までが物流・流通系VANに参入し、電気通信事業者数は十数社から一挙に1000社規模へと爆発的に増えた。
「週刊ダイヤモンド」85年4月6日号では、NEC社長の関本忠弘(1926年11月14日~2007年11月11日)が大規模VAN事業への強い意欲を語り、「日本電気は大規模VANで一番上手になれる」と自信を示している。当時のNECは「C&C」路線を掲げ、コンピューターと通信を融合する戦略の中核にVANを位置付けた。関本は80年から14年間にわたって社長を務め、NECをコンピューター、半導体、通信機などの総合電機メーカーに飛躍させた、いわば“中興の祖”でもある。
実際、専用線・専用端末・EDIを組み合わせた垂直統合モデルはNECの収益源となった。また、「商取引に関する電子情報を標準化し、安全なネットワーク上で交換する」という概念を日本企業に広めた功績は大きい。
しかし90年代後半、インターネットの普及によりネットワークは水平分業とオープン化へ転換。企業間取引はインターネット基盤へと移り、NECの閉じたVANモデルは徐々に競争力を失っていった。(敬称略)(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)
VANは、企業間でデータをやりとりするための専用ネットワークで、個別に回線を敷く必要がなく、信頼性の高い通信を提供するものだ。EDIは、発注書や納品書などの商取引データを標準フォーマットで電子交換する仕組みで、物流・製造・小売りなどBtoB取引の効率化を大きく押し上げた。
転機となったのは、85年の電気通信事業法施行による「通信の自由化」である。NTTの民営化と民間企業の通信事業参入の解禁によって、VAN市場は一気に膨張。通信網を持つNTT、KDD(現KDDI)にとどまらず、NEC、日立製作所、富士通、日本IBMといった電機メーカー、さらには三菱商事、伊藤忠商事、丸紅など総合商社までが物流・流通系VANに参入し、電気通信事業者数は十数社から一挙に1000社規模へと爆発的に増えた。
「週刊ダイヤモンド」85年4月6日号では、NEC社長の関本忠弘(1926年11月14日~2007年11月11日)が大規模VAN事業への強い意欲を語り、「日本電気は大規模VANで一番上手になれる」と自信を示している。当時のNECは「C&C」路線を掲げ、コンピューターと通信を融合する戦略の中核にVANを位置付けた。関本は80年から14年間にわたって社長を務め、NECをコンピューター、半導体、通信機などの総合電機メーカーに飛躍させた、いわば“中興の祖”でもある。
実際、専用線・専用端末・EDIを組み合わせた垂直統合モデルはNECの収益源となった。また、「商取引に関する電子情報を標準化し、安全なネットワーク上で交換する」という概念を日本企業に広めた功績は大きい。
しかし90年代後半、インターネットの普及によりネットワークは水平分業とオープン化へ転換。企業間取引はインターネット基盤へと移り、NECの閉じたVANモデルは徐々に競争力を失っていった。(敬称略)(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)
コンピューターと通信によって
「人工僕(しもべ)」を実現する
「週刊ダイヤモンド」1985年4月6日号より
日本電気(NEC)の事業はC&Cだと言っています。コンピューター・アンド・コミュニケーション、コンピューターと通信です。このC&Cというシステムをつくり上げるハードウエアとして不可欠なものがコンピューターと通信機とICです。
私は、C&Cは人工僕(しもべ)だと言っておりますが、肉体を作る細胞が半導体、ICで、それを使って肉体、すなわち頭の部分がコンピューターですな。それから神経に当たる部分が通信だということです。
じゃ、VANとはどういうものかというと、コンピューターが幾つか置かれまして、何も一つの種類じゃなく、日本電気のコンピューターもあれば、ほかの会社のコンピューターもある。それが一つの線につながれて人工僕の役割を果たすわけです。







