植田和男総裁の12月1日の名古屋市での発言で、日本銀行の「12月利上げ」はほぼ確実視されている Photo:JIJI
今や確実視される日本銀行の「12月利上げ」は、関税引き上げが来春の賃上げに大きな悪影響を及ぼさないことを確認する形で行われる。足元の円安進行や食品インフレの継続が、12月以降の日銀の引き締め姿勢を一段と前傾化させるとみるのは早計である。12月金融政策決定会合で要注目の中立金利に関する情報発信にも、多くを期待し過ぎない方が良い。(SOMPOインスティチュート・プラス エグゼクティブ・エコノミスト 亀田制作)
12月決定会合で確実視される「利上げ」
関税の影響を見極められる最速のタイミング
筆者は9月と10月の寄稿で、日本銀行が追加利上げを決断する際の基本ロジックは、米国の関税引き上げの悪影響がさほど大きくないことの見極め(関税のナラティブ)にあって、コメなどの食品価格高騰がもたらす基調的な物価の上振れ懸念(コメのナラティブ)は副次的な要素にとどまる、と主張してきた(参照『日銀の追加利上げを決定するのは「関税」と「コメ」どちらのナラティブか』)。
その上で、関税の影響を見極めることができる最速のタイミングは、「来年の春闘での賃上げ機運の強さ」を確認できる12月会合だろうと予想した(参照『高市政権下でも日銀の利上げは続く、追加利上げ「早ければ12月」シナリオは変わらない』)。
また、高市政権は金融政策への過度の介入を行わず、高い賃上げの継続が見通せるならば日銀の利上げを容認するだろう、との見解も示した。
その後の金融政策を巡る動きを見ると、こうしたシナリオ通りの展開となっている。
日銀の植田和男総裁は、前回10月金融政策決定会合後の記者会見で、緩和度合いの調整(=0.75%への利上げ)を行う前に「春闘の初動のモメンタム」を確認したいというフレーズを初めて用いた。これは、私が先に用いた「来年の春闘での賃上げ機運の強さ」に、まさに該当する言葉である。
この総裁発言を受けて、利上げタイミングは、大手企業の集中回答や連合による賃上げ集計の第一報が判明する2026年3月ではなく、その前の25年12月または26年1月に絞られた。
次いで植田総裁は12月1日の名古屋講演で、「利上げの是非について、適切に判断したい」というフレーズを用いることで、12月会合(12月18~19日)での利上げを強く示唆した。今や12月の利上げを疑う声は皆無に近い。
こうした日銀の一連の行動や情報発信について、10月会合で利上げを見送ったのは高市政権への忖度であり、12月会合での利上げはその後政権との折り合いがついた証しだろう、とみる向きがある。
しかし、この見方は正しくない。日銀は、春闘の手応えを得るタイミングとして当初から12月または1月を意識していただろうから、仮に高市政権が誕生していなくても10月の利上げは見送っていただろう。







