今後の経済政策について
2つの重大な争点

 もっぱらコロナ対策が関心を集めている昨今、自民党の総裁選では大きな争点にならないかもしれないが、経済政策についても考えたい。「次の首相」の経済政策は、日本経済の将来にも株式等の市場にも影響が大きい。

 一つには、金融緩和の有効性が財政政策に依存するようになっている現在、「緊縮財政的」なバイアスを持つ人物が次の首相になるとまずい。各候補者が、「財政再建」「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」などという単語を口走るたびに警戒心を強めるべきだ。

 さらなる大問題は、2023年を首相で迎える人物が、次の日本銀行の正副総裁3人の人事を決める可能性が高いことだ。日銀の「人事」こそが、金融政策の最も強力な「フォワードガイダンス(先行きの政策方針)」だ。金融緩和の継続を明確にしている人物を選ぶか否かが重要だ。

 この点では、アベノミクスの積極的継承を公言している高市氏は安心だ。一方、岸田氏、石破氏には、過去の発言から緊縮財政的な傾向がうかがえるし、安倍氏が主導した金融緩和を早く修正したがるリスクを感じる。

 筆者は、「金融緩和を続けたのに2%のインフレ目標が達成できなかった」ことについて、以下の4点のように理解している。

(1)金融緩和は適切であったし必要であった
(2)しかし長短金利がほぼゼロに達する状況では、それだけでは不十分である
(3)金融緩和に加えて、財政が拡張的であること(支出拡大ではなく、減税でも構わない)が必要だった
(4)それなのに二度の消費税率の引き上げなど緊縮的な財政政策が不適切だった

 次の首相には、インフレ目標を十分達成するまで「金融緩和の継続」と「積極的な財政政策」の二つを実行することが必要だ。

 次の自民党総裁・首相の最有力だと思われる河野氏については、この点のスタンスがどのようであるのか、筆者は今のところ判断材料を持っていない。知的には活発な人物なので、適切なアドバイザーを起用して経済政策に適切な理解を持ってくれることを期待したい。